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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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わが仰ぐ最後の日食にならむかと少し欠くるに立ちどまりたり
ああ日本の戦争力か何事にも「力」つけて言ふ国となりたり |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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庭の天一杯に咲く冬桜この月九度目の雪に美し
冷え込みも午後に緩みて三波川冬桜たちまち満開の花 |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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かにかくに四十余年の一人居か夫亡きのちの日月は疾(はや)く
ながきながき交りなりしを廃(し)ひし友言葉喪ひこもれるを聞く |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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幼稚園の制服を着て来し幼ないつになく丁寧に挨拶をせり
本門寺に来たりて真先にわれは寄る日本看護婦会の慰霊碑 |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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早咲きの黄色すがしき欄の花亡き君の名を付けて培ふ
炊飯器故障したれば炊く鍋の湯気なつかしく火を加減する |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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会員減、ページ減にも耐へ得べしこの歌誌愛する心のあれば
ボロボロになりしといへど尊かり復刊アララギのこの十九ページ |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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雨過ぎて誰も通らぬ参道を山のみ寺の灯が照らしゐる
手みじかに経緯(いきさつ)告ぐる文(ふみ)ありて灯の下にわが立ち直りゆく |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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練り歩く山車につきゆき川渡る御輿みき炭鉱の栄ゆる街に
自然災害一つなきわが故郷の街の底ひを坑道はしる |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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出産の畏れに始まりし祈りとも縄文土偶の呼びかくるもの
安産を祈る土鈴に変りたる五百年か土偶の音霊(おとだま)を得て |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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新しく来向かふものを受けとめていかに生きむか残る命を
人の無きノーベル博物館に声高に中国の人権問題を糺す映像 |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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表示灯の矢印の消えゆく交差点関はりなき人と固まりて待つ
雪解けの水を蹴散らしトラックの過ぐれば元の形に寄る水 |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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氷点下十度になれば御神渡り見らるるものを下がらず終る
安物を売る競争に弾かれて阪急も西武も基幹店失ふ |
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