|
○ |
|
宮地 伸一 |
|
平凡なる一生といへど心通ふ友の多きを喜びとせむ |
|
弟子運悪き先生なりといふ一首心に沁みて丸をつけたり |
|
|
○ |
|
佐々木 忠郎 |
|
枝々より離れゆくのが悲しきか桜紅葉は夕つ日に垂る |
|
くれなゐと黄いろの斑うつくしき匂桜のもみぢ葉ひろふ |
|
|
○ |
|
吉村 睦人 |
|
庭土に落ちし花梨もそのままに君居し家に人住みてをり |
|
意地悪を気侭なりしを言ひ合へど心は自づと君懐しむ |
|
|
○ |
|
三宅 奈緒子 |
|
かく言葉失ひしまま君臥すかそのあたたかき手を執りにけり |
|
うつついま吾はことなく冬の日を浴びて歩むか坂くだりゆく |
|
|
○ |
|
小谷 稔 |
|
トロイの址を掘りつつ株の取引を休まざりし現実主義の一面 |
|
失業中のエンジニアがわがガイドにて日本語たくみにトロイを巡る |
|
|
○ |
|
雁部 貞夫 |
|
「判りますか」と問へば吾が手に応へたり思ひもかけぬ強き力に |
|
弔ふも祝ふも一人と詠みましし君を偲ばむかの海峡に |
|
|
○ |
|
添田 博彬 |
|
日本語を書かせぬやうに出題し若き等の日本語を貧しくしてをり |
|
若き等の日本語貧しと嘆きをれど手を貸す己れに気付かず過ぎ来ぬ |
|
|
○ |
|
石井 登喜夫 |
|
用ありて古き日記を読みながら吾を信じてみたくなりたり |
|
いにしへより影を掬ひし人ありやかたむきて青き月がかかれり |
|