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○ |
東京 |
宮地 伸一 |
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篭に飼ふ生き物の脇に臥す男今宵も見て過ぐ駅の広場に |
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故障せる機械は臓物をさらけ出し辛うじて抜く切符ひとつを |
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○ |
東京 |
佐々木 忠郎 |
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気根垂るる赤榕を見むは夢の夢庭に蔭するまでは生きむか |
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墓守る人なき手稲のみ祖の墓思はぬ日もなくわれ老いにけり |
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○ |
三鷹 |
三宅 奈緒子 |
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月下美人の白き花びら酢にひたしひとりの夕餉す暑き日暮れて |
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夏樹々しげる自然園ゆきて何なさむ幼なごと並び象を見てゐる |
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○ |
東京 |
吉村 睦人 |
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食ひたきものなべて食ひたる思ひしてわが食欲の衰へてゆく |
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サッカーに騒ぎゐる間も自殺テロにその報復に死にゆく人ら |
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○ |
奈良 |
小谷 稔 |
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アララギに抗ふほどのいきほひのありし日懐かしそれぞれ若く |
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移る世に古き小詩型の雑誌まもり二十年よく堪へしと思ふ |
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○ |
東京 |
石井 登喜夫 |
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廃校の庭の草踏み靴濡れて少年徳田白楊の像に近づく |
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欅植ゑて四代のちを待つといふ友のあかるき声をよろこぶ |
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○ |
東京 |
雁部 貞夫 |
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路の辺の古物の店に得し小石ギリシャ先哲の面影刻す |
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ヒンドウ・クシュの麓の町に得しひとつ今も机上にバッカスの神 |
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○ |
福岡 |
添田 博彬 |
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小津ほどの美しき日本語と言ふ吾にアナクロニズムと声出し笑へり |
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一律二割の負担をねがへども味方面するマスコミは恃み難きかな |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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次の世は花に生れむと言ひたりき何の花ならむ聞くを忘れぬ |
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目をあけて吾に問ひたるひとつことあはれ人には告げずにをりぬ |
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○ |
東京 |
實藤 恒子 |
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水の音に沿ひつつのぼる滝坂の道は散り敷く忍冬の花 |
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原生林の雨にゆきゆく石畳の道に鶯の声縦横に |
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