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○ |
東京 |
宮地 伸一 |
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雪の上に八重咲きの赤き花散れるこの道通はむもあと幾たびか |
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生涯にただ一度パチンコをやりしかな隣にいましき五味先生も |
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○ |
東京 |
佐々木 忠郎 |
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発行所の移転は一月八日大安と決まりて編集会議終りぬ |
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年明けて大安けふは移転の日空は晴れたり風も凪ぎたり |
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○ |
三鷹 |
三宅 奈緒子 |
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時々の歓びに忿(いか)りに神田川をわたりき五年はやく過ぎたり |
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言葉なきままいまなほ病める人を思ふこの発行所に努め努めし |
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○ |
奈良 |
小谷 稔 |
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果て知らぬ大いなる国に今ぞ来て遡りゆく闇の長江 |
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父も兄も兵としてこの国を踏みき歌を拾ひてわれは旅人 |
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○ |
東京 |
石井 登喜夫 |
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特攻史料舘に写真は飾らずと在りし日の父君哭きて告げまししものを |
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苦心して見つけし写真納め得て鹿屋基地史料舘を立ち去る |
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○ |
東京 |
雁部 貞夫 |
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身みづから六十二年の生を断つ汝も会津の裔の一人か (弟逝く) |
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吾の持つ弟の髪ひと握り法顕越えし峠に埋めむ |
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○ |
福岡 |
添田 博彬 |
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憶良最中は廃鉱の町の身過ぎの知慧と気付きたるとき吾は噤みぬ |
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ホッパー跡はベンチひとつある広場となり雨静かなる町に人見ず |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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編集室に父と並びてものを言はずそれぞれの紙面作り合ひにき |
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父逝きてなほわが続けゐる仕事父を懐かしむ人らの間(あひだ)に |
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○ |
東京 |
實藤 恒子 |
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泳ぎ来て火照るからだに歩み出づ残るもみぢに雪置く下を |
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降る雪の川面に消えつつ神田川に立てる蒸気は低く這ひゆく |
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(以下 H.P担当の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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鈴鹿嶺の隆起より八百万年か伊賀より刻々移りし琵琶湖 |
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一億年のちの容(すがた)を思ひ見る年三糎今も動く琵琶湖の |
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○ |
小山 |
星野 清 |
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あまたなる日本人訪問者の一人としてシェークスピア生家の名簿に記す |
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この家を支へてすでに五世紀か黒々と太きオークの柱 |
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