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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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「黒人の女性」が差別語になると言ふ虐待するのか日本語をかくも |
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処女(をとめ)去りてぬくみの残る跡に坐る何か良きことけふはあらむか |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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人ならば半身不随の榧の木を伐れと言ふ庭師にわれ諾はず |
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半身は利かずとも半身は生きてゐる榧を窓に見る朝に夕べに |
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○ |
東 京 |
三宅 奈緒子 |
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『虹の行方』つひの名はそのはなやぎし生(よ)の象徴かけふの訃報よ
(悼長森光代さん) |
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三人(みたり)の子を置きてパリーに愛遂ぐと人はゆきたりそのひたごころ |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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ショーウインドのごとき席にわが坐りモーニングサービスのパンを食ひをり |
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われもしも権力持たばまつ先に携帯電話の使用禁ぜむ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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柴橋に画架据ゑ描く絵のどれも吾らと同じ写生に拠れり |
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岩群の峙ち狭く澄む渕のうべ人麻呂の調べにあらず |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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入院に付き添ひくるると妻言へどわれは危ぶむこの人も弱く |
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株を残して剪りし椿に芽の出でてわが身わが心ゆらぐ思ひす |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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西域の土産は緑の石一つ微笑み問ひき「于○(うてん)に出でし玉(ぎよく)か」と (落合京太郎先生)
※○の漢字は『門』構えに『眞』です。外字のため表示できません。 |
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崑崙のユルン・カッシュの夜光杯こよひは手にす君偲びつつ |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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椎間板に心を遣(つか)ふ幾年に歪める骨は椎管を狭めぬ |
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崩れたる椎体とディスクがじわじわと馬尾を締めつくるは思ふだに憂し |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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「わかりますか」と突然机の前に立つ「ああ何年ぶり貴方はトーマス」 |
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相変らず下手なドイツ語と笑ふかな吾ももどかし日本語にせむ |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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すはテロかと立ち竦みたり東京タワー二百メートルの上空を過ぎし轟音に |
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「なりはひにも頼むところ少なく」夕顔の巻の一行なにに思ほゆ |
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(以下 H.P担当の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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突つ立ちて見舞ふ政治家膝折りて人等のなかに座りし陛下 |
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水電気止めても自己の責任に三日は生きよと袋の見本 |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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本堂も並み建つ塔も棕櫚の毛に黒く葺かれて澄む空の下 |
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ひざまづき花を捧げて水を受くわれらヒンドゥーの民に倣ひて |
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