|
|
○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
|
八十五歳以上の都内に住める者半数は痴呆と言ふはまことか
老人に事故多しとてこの息子餅を呑み込むまでを見てをり |
|
|
○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
|
宰相も大臣(おとど)も幹事長も高く推挙せる刺客ホリエモン逮捕されたり
時を移さず検察庁より小菅(こすげ)に疾駆せり転落の人を乗せし護送車 |
|
|
○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
|
そのヴェールかかげて頬に口づけす明るきライトの下さはやかに
文科より転身し介護の途(みち)に立つ勁き志をその細き身に |
|
|
○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
|
世界十位より世界五位に躍進せりトリノ五輪直前尾崎快君
総理大臣をお手本にして誰も彼も責任を取らぬ国となりたり |
|
|
○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
|
子規の句の終りの二年に「雑煮」なし仰臥して食ふすべなかりしか
雑煮の句子規に絶えしは嚥下する力のあるいは失せたるゆゑか |
|
|
○
|
東 京 |
石井 登喜夫 |
|
ローカル線は禿山多き峡に入り古き朝鮮に会ふ思ひせり
駅前広場のベンチを占むるホームレス身綺麗なる壮年の男が多し |
|
|
○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
|
この湖に詠みたまひしかかの一首「迷ふことあり人といふもの」
先生の純にやさしき相聞歌人に知らえぬままなるは惜し |
|
|
○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
|
消費税の増加を最も待ちゐるは野党ならむと思へど言はず
耳もとに先生のみ声甦り心顫(ふる)へて浄書したりき |
|
|
○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
|
安曇野は日々吹雪くといふ友の家友の畑を深く埋めて
運命の命ずるままと言ふ声に少し休めとくりかへすのみ |
|
|
○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
|
石をかむ赤榕の気根に手触れつつ気力漲る思ひしてゐつ
真珠湾に似しとふ三机の海なぎて潜航艇に訓練せしか |
|
|
|
(以下 HP指導の編集委員、インストラクター) |
|
○ |
小 山 |
星野 清 |
|
法王のために半旗を今日も掲ぐホワイトハウスにここ議事堂に
広き原の柵の向うに柵を重ねホワイトハウスは人を遠ざく |
|
|
○ |
札 幌 |
内田 弘 |
|
哀しみに落ちゆくまでは居酒屋に饒舌のままコップ酒飲む
万巻の書を並べたる古書店に買ひしは一冊の文庫本のみ |
|
|