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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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子育ては失敗せりと今も思ふ心安らぐひとりだに無し
街灯の光のそばに立ついちやうは落葉おそしと言ふ説を聞く |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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杖つきて二十歩ほどあゆみては休む小春日和の人なき道を
喪中欠礼の葉書かきつぐ冬の夜半微笑む写真が労(ねぎら)ひ呉るる |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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年送るとつね歩む上水のみちを来ぬ蛍橋より歩みかへして
黒鳥(こくちやう)の抱卵をちかぢかと見るものかその巣にふかくうごかぬ一羽 |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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折々に歌に詠まれしこの庭の駐車場となりて跡かたもなし
様々の願ひ記されし絵馬の中「父と母が喧嘩しませんように」 |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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銀杏の木杉の木よりも高ければ黄葉は震ふ一木みながら
岸に添ふ渦に浮べる朱一葉左に巻きて止まることなし |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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鏡を見るなと妻の言へども見てしまふわが身どこまで痩せてゆくのか
自然がよし自然がよし仰ぎみよ雲が行き風が行く乗りてゆかむか |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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死者出でし演説会と聞きて胸さはぎ次ぎて告げたり君は死せりと (B・ブット女史を悼む)
演説終へし女史待ちゐしは銃弾か警備手ぬるしと現地の友は |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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納骨棚の下に在るべき骨壷の見えぬは仏の心と思へず
父母とをさなき弟妹のみ骨をばブリキにて焼きき臭へる中に |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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山に返ることなくあれな夏草を刈り退(そ)け峠への道を保てり
ほしいままに転(まろ)ぶ花梨(くわりん)を拾ひ持ち豊かに寂し明日香の村は |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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活きいきとせる面差しに弟の裡(うち)なる炎をわれは思へり
日を時を選びて最も美しき花の命を写すといへり |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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不時着に還りしを纏めて押し込めてここに国恥と総括せしめき
雀また蜻蛉になりて帰るとぞ出撃前夜の言葉を残す |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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開戦の日なるに触るる見出しなしわが拡げたる今朝の三紙に
開戦の記念の日さへ言はぬ代がわが命あるうちに来るとは |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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吠えながら追ひゆく犬の遠退きてそれより再び昼の静寂
耳に残る「九条を守る」低き声怨念の如く会場に籠もる |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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人の心わからぬままにメール打つ励ます言葉を終りに添へて
次に会はむ時には故郷の蜂の子や蝗のことも語り合ひたし |
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