『落合京太郎歌集』より
セイント・ジョン教会扉を開くる人居りて朝霧はうごくエルムの並木
われの如く上着脱ぎ持ちて歩みくる一人が微笑す微笑を返す
にいにいに似て寂かなりと告げやらむ夕暑き柏の青き下かげ
右側に小さなる四角の夜の庭光はあたるCupidとベゴニヤの花に
壺の中に余りし肢を引き入るる蛸の平安もわが覗く世界
しだれ桜に願を結び人去れば白き山茶花地にこぼるる
日本人の発音の濁りを思ひつつひえびえとうごく空気の中にあり
法律の道において日本の第一線をあゆまれた方であり、「アララギ」の選者でもあった。上の七首は、「昭和40年」の項より抜き出した。作者60歳の作。
感覚がみずみずしく、言葉から受ける印象があたらしい。
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