白富士が車窓に見えるこの景色通勤客は気付いているか
斎藤茂吉歌集『あらたま』(大正10年)茂吉の第2歌集。
わがこころせつぱつまりて手のひらの黒き河豚(ふぐ)の子つひに殺したり しんしんと雪ふるなかにたたずめる馬の眼(まなこ)はまたたきにけり 電車とまるここは青山三丁目染屋の紺に雪ふり消(け)居(を)り ゆふされば大根の葉にふる時雨(しぐれ)いたく寂しく降りにけるかも
第一歌集『赤光』に次ぐ歌集で、極めて特徴ある茂吉の歌が集められている。再び読み返すとまた新しい発見のある優れた歌集である。