春になる土の喜びをさきがけてなづなの花ぞ眼を開きたる
昭和27年 (62歳)
春来れば春ごとの茂りゆたゆたと在らむかぎりの我が友一樹
昭和56年 (91歳)
春立ちしあたたかき日光よろこびて行き返りする百米ばかり
昭和62年 (97歳)
『土屋文明全歌集』より
もうふた月ほど過ぎてしまったが、節分の頃には「立春」という言葉を入れた短歌をよく目にした。春を待つこころからであろう。この言葉には、とくべつな喜びが感じられる。ただ、「立春の・・・」で始まる歌や「・・・今日は立春」と終わる歌があまりにも多いと、またかと思ってしまう。その時に、土屋文明の歌集から「春」で始まる歌をさがしてみた。(「立春の」で始まる歌は無かった。)たくさん見つかった中から、三首をご紹介したい。
読むたびに、こころが新しくされる歌である。
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