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○ |
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えめ |
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掃除終えて広くなりたる我が部屋の畳に一人寝転びてをり |
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菜箸で湯にゆっくりと泳がせるパスタの麺は透き通リゆく |
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玄関に読みもせぬまま投げ置きしスポーツ新聞を帰り来て読む |
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国道の幅程もなき公園のベンチに座り我は息つく |
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カッターで切るのが好きだ鉛筆の芯をするどく尖らせてゆく |
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○ |
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深山 猪手 |
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霧雨の降りやまずしてなほ寒き空に虫鳴く声のみ聞こゆ |
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○ |
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小木 尚吾 |
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背中だけ見せている男が投げ捨てたマッチの燐の匂いが父さ |
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11月の投稿作品中から上記のものを選んでみた。 「えめさん」の第ニ首の「菜箸」の歌の下句はよく見ていいところをつかんでいる。 「カッター」の歌も良い.。 深山さんの歌は完成度を評価するが、以前にも述べたように、声調がやや古い感じがする。 島木赤彦調と言ってもよい。 「小木さん」の歌は近頃のいわゆる「新しい歌」の調子に近く、結句で「ひらめき」を感じさせるが、きわどい危うさを含んでいる。 マッチの燐の「ニオイ」を「臭い」と書かず「匂い」としたのは、親しみを表しているのだろうか。
「えめさん」の他の作はまだまだ推敲を要するものばかりだ。 「パソコンの線がはびこる」の「はびこる」は無理だ。 深山さんの他の歌を見ると「相当に理屈っぽい」人じゃないかと思わせられる。 理屈っぽい説明は歌には禁物だ。 「小木さん」はこの1首だけでは何とも言えない。 先月、私の目を奪った「藤丸君」の歌がなかったのは残念。 「新アララギ・キャンパス」の連中も沈黙.。 情けないことだ。 若い時はどんどん作らなくては駄目だ。
「犬も歩けば棒に当る」とか、私も君達の年頃には1日に20首、30首作ったものだ。
二千首作って三首くらいを今も残してあるといった調子だ。 |