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今月の秀作と選評




星野 清(新アララギ編集委員)


秀作



はるか

霞立つ菜の花畑めざし来て手に取る小花は蕊まで黄色

菜の花は黄に広がりて揺れながら曇天に向かい匂いを放つ


評)
情景鮮明にして、作者の心情が反映されている。今回の菜の花の一連は、なかなかの力作。



大志

五月病いつしか癒えて管理図をつくる作業に日々なじみゆく


評)
新社会人としての自己の姿であろう。しっかりと掴んでいるものがある。



高橋美千代

みづみづしき若葉となれる枝々に部員ら白きユニフォーム干す


評)
新学期も軌道に乗ってきたころの、校庭の一隅か。すがすがしく、活力の感じられるところが魅力。



かすみ

胡桃ふたつ掌に乗せてその指の動かぬことを父嘆かひし


評)
亡き父の追憶。奥行の感じられる歌となった。2句目の「て」は省きたい。掌は「てのひら」「たなぞこ」などの読みがある。



みどり

着物着て出かける機会ほしいねと眺めて帯を解く手が止まる


評)
友人との着付教室などでの寸景と思うが、その場の雰囲気が捉えられている。


佳作




としえ

身を反らしバイクを避けし暗闇に膝わななきてしばし立ちゐぬ

雨雲の遠ざかる山藍いろに冴えて谷より霧たちのぼる


評)
ある一瞬を、的確に捉え得た。次、よく見て、丁寧に描写しているところがよい。



あいこ

きらきらと琥珀の光まきちらし小波輝く夕映えの海

土の香に誘われ来しか雀二羽畑に啄ばみさえずりており


評)
初回からの歌をよくぞここまで作り上げた。その意味での努力賞。次も、なかなかの作。



西岡 仁雅

夏物の洋服おろし街へ出る五月の風を肌に感じて


評)
初夏の溌剌たる気分をのせた歌。



大窪 和子

ニコライ堂の鐘鳴り出でてシテ島に夫とききたる鐘を思ひ出づ


評)
もう少し整理可能。こだわってもっとよくしてほしい。



keiko

別人のような怒声が返りきぬわが物言いに棘のありしか


評)
初句がよく働いて、自分の言行についての内省を捉えての歌。



高橋美千代

花水木に見え隠れする女生徒ら春陽ふりそそぐ校庭をゆく


評)
その場の雰囲気が感じ取れる。



みどり

観客に臆せず義母の浄瑠璃の初舞台とは思えぬ語り


評)
何とかものにしようとした執着心を称えて…。



遠野

靄の立つ林道に遊説の車停め市議選の間のひととき憩えり


評)
上句に特色がある。下句、「…の間をひととき憩う」がよかろう。



石川一成

旗持ちて街から街へと練り歩き市議選運動これにて終わる


評)
お疲れ様、ほっと一息と言うところ。

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