佳作 |
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○
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英 山
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夏祭りに過ぎにし若き血が騒ぐ路上ライブのジャズとフォークに
祭りの締めに地元踊りを促せどたちまち離るる若者の群れ
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評)
祭りの素材を捉えるのに、懐かしさとかふるさとへの思いなどの情緒でとらえるのが普通であるのにこの作者は新しい祭りに工夫をこらすふるさと、ふるさと興しに必死になる吾が町を描いている。作者の作歌勘のよさを如実にあらわしていよう。 |
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○
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イルカ
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美容師をめざし働く子の指のシャンプー剤に荒れて傷みぬ
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評)
秀作にしてもいい一首、初句は「美容師をめざして」とすべきだろうがこの一首には子を思う気持ちが前面にでていていい。単純なのが強い。 |
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○
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ひ で
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またひとつ歳を重ねて立ち尽くす至仏の山頂風吹き止まぬ
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評)
秀作に押した一首と併せて読むときこの歌がまた生きてくる。ひとは否応もなく齢を重ねる。時間を削って生きている。そのあせりのようなものを作者も感じているのであろう。揺らぐ心情が余すなくのべられていい。ただ、結句はまだ工夫の余地があろう。 |
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○
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けいこ
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市議会の移転論議を経て進む病院の工事鳴り響く夏
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評)
決定稿に示されたこの一首は推敲課程で、作者の家に迫るという内容が変って来た。それで「鳴り響く夏」という一般的な表現になったのは惜しい。 |
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○
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新 緑
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麻痺の手指かいふくの反復練習を百まで数うるベッドに起きて
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評)
療養の切迫した心情が具体的に述べられていい。この心情を述べるのにマンネリにならないように工夫することはまた大変であろう。今後の努力に期待しよう。 |
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○
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斎藤 茂
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家業なりし魚屋の日々語りゐる姉のしぐさに母の面影
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評)
物語性の強い歌だが、作者の思いが溢れていつので救われた。 |
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○
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栄 藤
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八十にて視力失ひ心臓病み父は治療を拒みて逝きぬ
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評)
この歌も素材の目立つ歌だが、作者の思いが強いだけに歌が成立している。父への思慕はかく、淡くせつない。 |
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○
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むぎぶどう
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野良犬の後ろを歩くわれもまた犬であるかと尾を振ってみる
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評)
一見、歌らしく作ろうとしていないのがいい。この作者にはなにか強い個性を感ずる。野良犬に自分を見るというのは自我そのものであろう。その自我が本当になにものであるか、見極めたい個性である。 |
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○
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仲 山
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早朝のホームの駐車場下りてみる小鳥も鳴きし忘れいたこと
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評)
ようやく五首纏まった感じがういういしい。なかでもこの一首がいい。「ホームの駐車場に」と丁寧に詠むほうがいい。ありのままでいい。ありのままほど難しいことはない。 |
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