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○
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荒川 英之 *
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世の中に尽くしてほしいと孝の字を名前にいれて生(あ)るる日を待つ
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評)
父親になろうとする、期待が素直にでていていい。他の四首もまた作者独自のものにしていて揃っている。今後の作歌に期待。 |
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○
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けいこ
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幼名に名前呼び合ふ友七人やがての老いを語りて尽きず
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評)
なかなか味わいのある一首。やがての老いに対しさまざまの反応があるのであろう。たのしい中のふっとした淡い寂しさがよく出ている。 |
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○
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まりも
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抱きつかれ孫とともども転ぶとき祖母の絣の前掛け浮ぶ
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評)
今月の連作から、容易ならざる少女期を送られたことが推察されるが、その祖父母への思いが、抱きついて来た孫と一緒に転びながら髣髴としてくるのか。普通の孫歌でいないのがいい。 |
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○
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金子 武次郎 *
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四車線となりし道路のこのあたり老舗の菓子屋跡形もなく
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評)
時とともに何もかも流れる。人も街も政治も官僚も言葉も文学も、老舗の菓子屋とてまた同じ。嘆きが具象化されていていい。 |
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○
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吉井 秀雄
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咲き残る駒草の花下に見ん掴む鎖の鉄が匂へり
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評)
結句の作者しか分からない感動をよく捉えた。山に挑むもののこころ躍るさまがよく出た。歌に情緒があふれているのもいい。 |
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○
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さつき *
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晴れ渡りふたすじの雲たなびきて筑波嶺青く遠くひかれり
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評)
叙景の歌が少なくなったが、その叙景歌である。今回は蝉のよびかける歌もいいと思ったが、こちらにした。捉えにくい大きい景をよく切り取った。 |
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○
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山本 景天
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マンションのエントランスに思ひをり草雲雀鳴きゐし売りたる家を
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評)
今月の一連はよく全体が引き締まったいい歌が多い。なかでもこの一首が目立つ。草雲雀は蟋蟀の一種、売られた家の雰囲気をよく伝える。そしていまマンションにそれを想起する、いい歌だ。 |
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○
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天井 桃 *
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味噌汁と線香の匂いする家に祖母思い出す配達の朝
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評)
ヤクルト配達の歌一連を推敲されるのに時間一杯骨を折る。こんなところに作者の執着を見る。私はこの作者の書き込みがあるかと夜24時まで待った。そして再終稿に出会った際、ひそかに安堵した。特にこの歌は素直にほのぼのとしていい。 |
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