佳作 |
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○
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金子 武次郎
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稲刈りの勤労奉仕で出されたる白きおにぎり今も忘れず |
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評)
大戦を回顧した作で、類歌も少なしとしないが、それでも強い訴えを持つ。事実の持つ強さである。 |
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○
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松本
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真空管時代の技術者われは今液晶テレビの回路を知らず |
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評)
一種の生活的な味わいがある。これも素材の持つ強みを持つ。 |
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○
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けいこ *
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霧晴れてくっきり見ゆる鬼ヶ城もみじうつくし癒えし眼(まなこ)に |
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評)
景と情のバランスの良い作品となった。鬼ヶ城という山は四国の山を知っているが、各地に方々有ると思われる大抵が岩山だ。 |
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○
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ゆず
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朝まだき新聞受けに音のして我のせわしき一日始まる |
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評)
これも、かなり類型が多いが捨てがたい作。 |
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○
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さつき *
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ゆっくりとロープウエーは動き出しつぶさに見下ろす丸沼の森 |
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評)
奥日光から上州へ抜ける辺りの連作。金精峠から奥白根へ登るルートには白根葵(ここ特有の植物、美しい紫色の大型の花が咲く)の群落がある。叙景歌の良さがある。 |
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○
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吉井 秀雄 |
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電源を入れてコンプレッサー起動すれば朝の構内に地鳴りの響く |
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評)
かつてのアララギにはこうした労働の歌が沢山有った。今はむしろ珍しい。生活詠の原点だ。次の「油の匂ひ」の歌も良い。 |
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○
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太田
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山渓の川面にはかに騒立てり野鴨降り来て水面すべる |
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評)
清澄な叙景で日本画でもみているようだ。但し、6、7首は「雄島沖」や「五箇山」が出て興ざめだ。五首で切るべき。違反でもある。最終稿は五首なのです。 |
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○
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荒川 英之 *
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仕事から帰りし妻に幼な子がまず駆けよりて固く抱き合う
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評)
新アララギの会員の年齢層は七十歳近いと思われるが、この一連からは大分若い世代の生活が伺われ新鮮である。 |
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○
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市村 恵
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住みゐしはたれとも知らず主なき庭の柿の実赤く熟れたり
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評)
寂しいような光景だが、これも現代の山里の風景なのであろう。 |
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○
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まりも
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吾が家を守り続けて三十五年色褪せし瓦に苔が覆ひぬ
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評)
古色を帯びた家を改築するかどうか迷う所だろうが、そうした心理も詠み込まれた一連。生活を見つめている所が良い。 |
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○
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新緑 *
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注文の皿を眼で追い孫ふたり回転寿司を競いて食べぬ
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評)
私もこういう場面を見たことがある。印象に残る作。次の「ヤッタア」の歌も良い。改作するのに苦労したことを思い出した。 |
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