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(2013年9月) < *印 新仮名遣い> |
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八木 康子(新アララギ会員)
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秀作 |
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○
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栄 藤
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無呼吸を防がむとして横向きにリュックサックを背負ひて眠る |
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評)
事実の重みが胸に迫ります。「歌は歌材、事実に勝る歌材なし」という言葉も思い出しました。
「度胸が少し」「キウリ・ナスビ」の歌も軽妙な中にわずかな苦みがうかがえます。 |
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○
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Heather Heath H *
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留学生が会いに来たりぬ帰国時の己が齢の息子を連れて |
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評)
情感が滲みます。背後にある長い月日と数々の思い出が歌に厚みを与えています。 |
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○
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金子 武次郎 *
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自動車の行き交う音超え郭公の鳴く声透る森の奥より |
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評)
日常の散歩道での発見が、臨場感を伴って伝わります。じっくり集中された結果でしょう。 |
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○
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菫
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ハイウェイのカーブ曲がれば新たなる雪の連山空を突き上ぐ |
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評)
スピード感がリアルに表現され迫力があります。
大きな景、清浄な空気まで共有できそう。結句が圧巻。 |
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○
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蒲公英
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小雨止みカヤックレースは対岸の夏雲めざして最後のダッシュ |
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評)
躍動感が新鮮。一生懸命言葉を捜し、思いを伝えようという姿勢は上達の何よりの力となるでしょう。 |
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○
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石川 順一
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「じてんしゃ」のチョークの文字はまだ残り盆踊り後の余韻深かり |
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評)
消えかけた文字を見逃さなかったのはお手柄。駐輪場を示す地面を「チョークの文字」の一語で表現し、その一点に焦点を当てたことが成功につながりました。 |
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○
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茫 々
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石のベンチに寝れば冷たさ伝ひきて能登一宮秋空高し
ひたひたと川面をのぼり来る秋の冷たき光底に透きつつ |
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評)
初稿に執着せず、すぐに力みが取れていったのも、助言に真摯に耳を傾ける姿勢ゆえでしょう。
歌はまず内容です。特異な表現や一般的でない語彙は、それ自体目立ちすぎて歌を壊します。あくまでも普段の言葉で。 |
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佳作 |
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○
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ハワイアロハ
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ランプ灯し子らに本読み聞かせたる山小屋暮らしのあの幾年か |
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評)
珍しく貴重な体験に驚きました。きっと多くの作品につながるだろうと期待します。 |
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○
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波 浪
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大腸炎の妻に添ひゆく頼られて八十五歳のわれといへども
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評)
生き方が前向きなのが何よりです。「ラジオさへ無き代に生まれ八十余年パソコンの次は何が世に出む」も、心情がまっすぐ伝わります。 |
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○
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時雨紫 *
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門くぐり飛び石数えて玄関へ鼻に懐かし我が家の匂い
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評)
「母の前掛け腰に巻き力を入れて鍋底磨く」も、共にまっすぐな思いの伝わる歌です。連作としてこの2首が並べば、苦労した「里帰り」も省けましたね。 |
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○
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くるまえび *
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蝶は舞い鳥の飛び交うわが庭に今日は見上げる二重の虹を
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評)
地上の楽園のようですね。「ミリラニの道」「斑入りの一輪」も、目に浮かぶようです。 |
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○
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紅 葉 *
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雨傘を差して炎暑の朝を行くわれに視線を向ける人なし
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評)
この夏の一シーンを手際よく切り取って、味わいがあります。 |
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○
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きよし
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自家製の甘唐辛子炙りけりビールの泡の立つ宵の口
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評)
軽やかに詠まれて、思わず私もお相伴したくなった一連でした。初句は「菜園の」「摘みて来し」「プランターの」などもありましたね。 |
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● |
寸言 |
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久々に「今月の秀作と佳作」のバックナンバーを最初の方から少しずつ読み返しています。
このHPの初期を担当してくださった選者からの貴重なアドバイスの数々など、ぜひ皆さんにも読んでいただけたらと改めて思いました。
八木 康子(新アララギ会員)
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