佳作 |
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○
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波 浪
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心電図の良かりし妻が映画観に友と行くなりわれは見送る |
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評)
心配から解放されて、外出を楽しむ妻。結句の淡々とした表現には、共によろこぶ作者の深い視線が感じられる。 |
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○
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きよし *
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勉強がしたいと言う子の一人増し八つ有る席笑顔で埋まる
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評)
元気な笑顔が並んでいるのだ。読み手の私たちまで嬉しくなってしまう。下の句の言葉一つ一つが弾んでいる。 |
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○
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くるまえび *
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愛らしき紙塑人形に見惚れおり歌の道極めし鹿児島寿蔵の作
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評)
人形づくりも歌の道も一流であった。「見惚れおり」を省いて、人形の様子が具体的に描写されると更によいと思う。 |
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○
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Heather Heath H
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乗り慣れぬ都電ラッシュの凄まじさ圧されし胸が夜半に痛みくる
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評)
上の句がやや説明調だが、下の句の実感の表現により、引き締まった。初稿にあった「初参加」の歌も印象深い。 |
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○
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まなみ
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父逝きて十五年経つ書斎には唯に広がれり六枚の畳
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評)
父の姿が今もありありと目に浮かぶ部屋なのだ。畳のみの空間が、胸に痛い。「伊勢弁」の歌にも惹かれる。 |
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○
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金子 武次郎
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老い人の切れるを咎むることなかれ生きる意欲の証にあらずや
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評)
「切れる」という現代の言葉が内容を強めた。老い人の姿には、常に前向きの作者自身も重なっているのであろう。 |
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○
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栄 藤
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落雷に打たれしパソコン直り来ぬ己が病の癒えたる思ひ
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評)
パソコンが如何に身近な存在であるか、下の句には実感がある。揺らぐ心が表現された他の二首も、忘れがたい。 |
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○
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もみぢ
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灰汁染みし指を眺めつつ蕗を食むこの苦味よし夕餉に添へむ
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評)
日常の中にあって、ていねいに柔軟に生きている作者であろう。自分で自分に語りかける下の句に惹かれる。 |
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○
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石川 順一
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蜘蛛の巣が顔や手に付き早朝にチラシ配布を完了したり
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評)
労働から生まれる表現はいいな、と思う。言葉のながれが自然である。「コーヒー」の歌も、この夏にふさわしい。 |
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