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 | (2015年6月) < *印 現代仮名遣い> |  
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 | 小谷 稔(新アララギ選者) |  
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| 秀作 | 
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○ | 
 | 金子 武次郎 |  
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 | 昇る日に思わず両手合わせたり癌病棟の窓辺にわれは |  
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 | 評) 癌の告知にも乱れることがない。これまでの謙虚な研鑽を重ねられた成果だと思います。技巧を超えた心境の深さがあります。
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○ | 
 | ハワイアロハ  * |  
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 | 四十日の薬をついに終えたりと飲みしワインに頬熱くなる |  
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 | 評) 足の重い故障をやっと克服できた喜びの歌を見ることは担当者にとっても喜び。はじめに「祝い」という発想があったがそれは作者の先回りの説明になるので下句で読者の観賞に委ねる方が味わいが深くなります。
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○ | 
 | くるまえび * |  
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 | 世界中全ての人の食卓にエビ載せる夢とげてリタイア |  
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 | 評) こんな壮大な夢を遂げて退職とはおめでとう。今回の「成長し目を光らせて群游すクルマエビたち明日は出荷か」この作も愛情ゆえの観察力がよく生きています。
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○ | 
 | 紅 葉 * |  
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 | 家じゅうのテレビを消して就職のできない子等と忍を分け合う |  
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 | 評) 就活にあれほど奔走したのに内定がもらえない。子等の辛い心を察して家じゅうのテレビを消して子等と忍耐を分け合うその家族愛が美しくせつない。
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○ | 
 | レモネード * |  
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 | 不用品あれもこれもと捨て去りて部屋の広さに大の字に寝る |  
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 | 評) 平素片づけたいと思っていてもなかなか実行できない。それをついに遣り終えた達成感がすがすがしい。しかも作者が女性であることも痛快です。
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| 佳作 |  
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○ | 
 | 石川 順一 * |  
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 | クレマチス見れば見るほど中心に目を持つ様な生き物となる |  
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 | 評) 擬人法に凝る作者であるがこれは今はやりの作為的な浅い擬人法とちがって実感がこもっています。
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○ | 
 | 波 浪 * |  
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 | 横になれば楽になるわが怠き身も楽にならざるときも来るべし |  
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 | 評) 横になって楽になって一息ついたときふと思う。横になっても楽にならない日がくるにちがいない。そんな気弱な心に寄りそうのも短歌である。
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○ | 
 | 栄 藤 |  
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 | なほ欲しき食事なれどもわれは耐ふ脂肝の進みゆくを恐れて |  
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 | 評) 食欲と病勢との調整は容易ではなかろう。その食欲を抑制する意思の力。
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○ | 
 | 鈴木 政明 * |  
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 | わが職場のパソコンのシステム変えられて戸惑う多き世代か吾も |  
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 | 評) パソコンのシステムが変えられてそれに順応しにくくなる世代の嘆きを捉えている。
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○ | 
 | 夢 子 * |  
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 | 小さき卓窓辺に移しコーヒーを入れて君を待つ風薫る朝 |  
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 | 評) ささやかにさわやかな気分のただよう清潔感の作。
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○ | 
 | ハナキリン |  
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 | 立体の駐車場より廻りつつ下る光を見上げ目で追う |  
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 | 評) 立体の駐車場という現代の建造物を新鮮な視点でとらえています。
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○ | 
 | 時雨紫 |  
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 | 胸を張り古代ローマの遺跡背に老女連れ立ち闊歩してゆく |  
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 | 評) 古代ローマという背景と元気な老女の取り合わせが新鮮。
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| ● | 寸言 |  
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 | 新アララギのH・Pでは「アララギ」のモツトーとしての「写生」ということ、生活に根ざした感動、技巧をもてあそばないこと、などを大切にしています。ときにそんな方向には反する作り方の人があります。 小谷 稔(新アララギ選者) |  | 
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