佳作 |
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○
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ハナキリン *
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東屋を吹きぬけてゆく風のなか心軽くなれる我に出会いぬ |
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評)
改稿1になり、大きく歌が動いた。風のながれのように柔らかな詠みぶり。結句が、なんとも魅力的である。 |
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○
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金子 武次郎
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わが終の棲家とならむ墓所求め訪ひし霊園は公園のごとし
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評)
重い内容で始まるが、結句は「公園のごとし」と、からりとしている。自分の生に丁寧に向き合う中から生まれた歌。 |
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○
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菫 *
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旅の途に一日訪ねんハイドパークを大統領の愛せし生家
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評)
フランクリン・ルーズベルトの生家を訪れた折の一連。弾むような息づかいが感じられるこの歌をもって、始まる。 |
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○
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雲 秋
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老人会麻雀有志の集まりて卓を囲めばかがやく眼と眼
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評)
え?と思う内容で始まり、結句に至って一気に高められる。「かがやく眼と眼」という把握が、この歌の命であろう。 |
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○
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時雨紫 *
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目の見えぬ母に別れを告げしとき頷くのみに長き沈黙 |
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評)
施設の母君を訪ねた折の一連の歌から。結句の「長き沈黙」は、別れがたい母と娘の思いを伝えてくる。 |
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○
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波 浪
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逞しくはあらぬ身体に生きて来し八十八年か鏡に見入る |
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評)
自分をいたわるような深い眼差。「鶴と亀の折り紙付けて妹二人米寿の祝ひを持ち来てくれぬ」に続く歌。 |
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○
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夢 子 *
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ソロソロと手を差し延べてオランウータン蝉に触りてみんとするなり |
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評)
ただ一点に絞って、行動をとらえた。そのためであろう、人にも似通う“好奇心”と緊張が、ありありと描かれた。 |
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○
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紅 葉 *
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あの角を曲りきらずにまっすぐに走り続けんきっとあるはず |
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評)
作者の住む地、広島の街を詠んだ一連の歌から。ジョギングの時にふと抱いた、何かを待ち望むこころの動き。 |
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○
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くるまえび
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はるばると訪ね来たりし甥たちにレイ掛けやりぬ家族の絆 |
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評)
下の句には、熱い思いが凝縮されている。「妻とともに苦楽乗り越え四十七年海外暮らしの・・・」の歌が続く。 |
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○
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鈴木 政明
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存在を誇示するごとく蛙鳴きてわが故郷の春は過ぎゆく |
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評)
上の句の独自な感じ、つづく下の句の大きな捉え方に惹かれた。畔に咲く菖蒲の歌も、丁寧な詠みぶりであった。 |
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○
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岩田 勇
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工大の門の柘榴の実の爆ぜて人ら見上ぐる日曜日の朝 |
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評)
結句に至るまで、丁寧に詠まれた。「工大の門」「日曜日の朝」といった具体的な語が歌を生き生きとさせている。 |
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