|
|
|
|
|
|
|
(2015年9月) < *印 現代仮名遣い> |
|
内田 弘(HP運営委員)
|
|
|
|
秀作 |
|
|
○
|
|
ハナキリン *
|
|
水と油のごとき同僚も多くいて乳化剤となり働く私 |
|
|
評)
職場の人間関係をさらりと詠って効果的である。「乳化剤となる私」と大胆な言葉選びで成功している。 |
|
|
|
|
○
|
|
ハワイアロハ *
|
|
抱き合いて波間に揺れるカップルを真似て夫の腕に抱かれる |
|
|
評)
ほほえましい場面が目に浮かぶ。無理のない自然な表現の中に夫婦の愛情が感じられる。 |
|
|
|
|
○
|
|
金子 武次郎 *
|
|
ナチの手口に学べば合憲と嘯きし麻生太郎は本音を漏らす |
|
|
評)
むずかしい時事詠だが、このくらい思い切って詠うのもひとつの遣り方である。詠おうとすることが明らかで良い。 |
|
|
|
|
○
|
|
若山 かん菜 *
|
|
カーテンの隙間を染める赤信号今宵の夢もそめるだろうか |
|
|
評)
夕暮れの時の道の赤信号がカーテンの隙間を染め、その赤の連想から夢もどんな色に染まるのか、と個性的に詠ったところが優れている。 |
|
|
|
|
○
|
|
鈴木 政明 *
|
|
しわしわのワイシャツの背にアイロンを当てれば伸びる明日は月曜 |
|
|
評)
サラリーマンの哀歓が出ていて良い。「しわしわのワイシャツにアイロンを当てる」事が、即ち明日からまた仕事が始まるという事を表現していて巧みな歌だ。 |
|
|
|
|
佳作 |
|
|
○
|
|
夢 子 *
|
|
あらぬ方に歩くがに見せ雄鶏は突然襲いぬ我がめんどりを |
|
|
評)
個性的な詠い振りで目を引いた歌だ。雄鶏の攻撃の作戦をユーモラスにとらえて面白い歌である。 |
|
|
|
○
|
|
時雨紫 *
|
|
夕立ちの土ぼこり舞う並木道を駆けゆく人の残す雨の香
|
|
|
評)
過不足なく的確に写生している歌。「駆けてゆく人」が雨の匂いを残してゆく、という所が印象的な歌である。 |
|
|
|
○
|
|
まなみ *
|
|
アボガドの種はコップの水の中ぽっかり割れて芽を出し始む
|
|
|
評)
アボガドを毎日観察していて、種の不思議さをつぶさに表現したところが面白い。生命を愛しむ思いが心の底にあってこの歌になった。 |
|
|
|
○
|
|
菫 *
|
|
力めども憎めぬ顔の悪役は額の汗を何度も拭いぬ
|
|
|
評)
ミュージカルを観ての歌。ユニークな切り口で役者を把握しているところが良い。 |
|
|
|
○
|
|
雲 秋 *
|
|
「また来るね」車窓を開けてハイタッチ無邪気な孫娘(まご)の帰る黄昏 |
|
|
評)
ほのぼのとした孫への愛情が具体的なハイタッチに表現されて成功している。結句の「黄昏」もよく収まっている。 |
|
|
|
○
|
|
くるまえび *
|
|
クルマエビが月の灯りを反射して星空の如く目を輝やかす |
|
|
評)
独特な境地を詠って新鮮である。養殖のエビに対する愛着もよく伝わって来て良い歌だ。 |
|
|
|
○
|
|
紅 葉 *
|
|
自転車に乗って親子が会話する「むしのこえ」「そうあれは蝉だよ」 |
|
|
評)
親子の会話がほのぼのとしている。その様子がすんなりと読者にも伝わる。下句を会話だけで纏めたところが良い。 |
|
|
|
|
● |
寸言 |
|
|
今月も熱心に多くの皆さんが投稿してくれました。継続は力です。これからも是非続けて作歌をしてください。
さて、今月は個性的な詠い振りが目立った月でした。様々な身に起こる事柄に照準を合わせ出来るだけリアルに詠う、という態度のみなさんが多く、力強い思いでした。特別なことを詠うのではなく、身近な出来事を真摯にとらえ心を込めて詠う事が大切です。その事が実感溢れる共感を呼ぶ歌になるのだと思います。
内田 弘(新アララギ会員)
|
|
|
|
|
|
|