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(2018年9月) < *印 新仮名遣い > |
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米安 幸子(新アララギ会員)
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秀作 |
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○
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ハワイアロハ *
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高熱にうわごとを言う母の手を握りて告げる我の帰省を
その時が来ればと延命措置を問う医師に要らぬと母の意を告ぐ |
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評)
逼迫した場面に臨む作者の気持ちがしっかりと詠めている。終末医療を受けるにあたって、延命措置への心構えは家族にとり大きな課題である。推敲の末の「母の意を告ぐ」によって、一首に重みが加わり、動かし難い作品になったのではなかろうか。 |
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○
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菫 *
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帰国後の母の回復目覚ましく「ハワイ効果」と医師は呼びたり
十日ぶりの入浴なりし母と聞き午睡の母を起こさず帰る |
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評)
ハワイ在住の作者が看護のために帰国したことが、母君の回復を助け、まさしく「ハワイ効果」だと医師は診たてた。二首目の「帰る」は病室からの退所とも、ハワイへの帰国とも読めるが、いずれにせよ作者の優しい心遣いが読者の共感を呼ぶであろう。 |
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○
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中野 美和彦
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我が窓に見ゆる神社の森かげは万葉集に詠む三国山なり
むささびの鳥まつごとく背をまつと訴ふ歌碑を叢に見出づ
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評)
近郷の三国山の歌碑は「三国山木末(こぬれ)に住まふムササビの鳥まつごとく我(われ)待ち痩(や)せむ」
今月はこの一首を読み深め、歌に私情を重ねて詠むという試みであった。型に嵌めてしまうと歌も窮屈になってしまう。偏り過ぎないように。自由にうたえるように。 |
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○
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まなみ *
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新学期モンキーポッドは校庭に大き影落とし子らを迎えぬ
校庭を斜めに突っ切るマングースに子等は名前をつけて見分ける |
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評)
モンキーポッドは「この〜木なんの木ふしぎな木」と唄われたハワイの樹である。裾広の山形に茂る樹の下は子供たちには日よけテントであり格好の遊び場であろう。二首ともいかにも南国らしく生き生きとした歌となった。 |
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○
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かすみ *
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散歩中大粒の雨降りてきて雲湧く下のわれは小さし
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評)
湧きあがり覆いかぶさるような、夕立雲の下を小走りに行くのかもしれない。「われは小さし」というフレーズを得て叙景に詩情がそなわった。 |
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佳作
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○
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鈴木 英一 *
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稲田にて農薬散布の無人ヘリ日本農業もかく成り行くか |
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評)
ヘリコプターばかりか近年はドローンも使用されるという。
結句の「か」は・・・だなあという感動であろう。 |
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○
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夢 子 *
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何もかも君に頼りて生きているこの危うさを幸せと呼ばん |
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評)
お年を召してなおこの愛らしさ、幸せと言わずしてなんと況や。 |
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○
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はずき *
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引退後ゴルフ三昧を楽しめず仕事のありてこそと今知る |
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評)
引退間もない作者。「仕事ありてこそ」には、強い説得力がある。もっと早く短歌に出合いたかったともあり、今後への期待をこめて応援したい。 |
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○
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文 雄 *
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サッカー選手が日本の暑さに耐へながら初めて覚えし言葉は「あつい」 |
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評)
スペインから J1・ヴィッセル神戸に所属したばかりのイニエスタ選手。試合後のインタビューに、笑いながら「暑い」と応じたのであった。過不足なく短歌のリズムに乗せている。作者の言葉に対する敏感さが窺える。 |
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○
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山水 文絵 *
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サイレンと同時に飛び出す勝者たち立てぬ敗者ら嗚呼甲子園 |
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評)
今年は第100回の「全国高校野球選手権記念大会」であり、話題の多い大会でもあった。試合終了のサイレンが、勝者と敗者を際立たせるところに目を向けていて特色のある歌。 |
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○
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酔芙蓉 *
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語り部の南部訛りがおかしくて民話の世界にひと時浸る |
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評)
「おかしくて」はここでは、味わいがあるとか趣があると言う意味に読み取る。友人との旅の一場面だという。 |
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○
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時雨紫 *
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頼まれしオウムの水替え手間取れば英語の罵声ケージより聞こゆ |
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評)
旅行中の友人のオウムの世話。可笑しくもあり、言外の状況も想像できて独自性がある。 |
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○
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紅 葉 *
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週末を全部つぶして模擬試験効果のあれと願いて今日も |
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評)
何か資格試験への模試であろうか。応援したくなる。 |
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○
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原 英洋 *
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日を浴びたエノコログサの小さき穂輝きそよぐ台風ののち |
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評)
エノコログサの愛らしさには誰しも共感をおぼえる。台風ののちは要るだろうか。 |
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寸言 |
今月は歌を始めたばかりという方もありました。見聞きするものなんでも歌にと気持ちの弾むときです。どうぞ恐れずに沢山作ってください
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介護の歌もありました。避けて通れない命題を真正面から詠んだ歌には、迫力がありました。介護を受ける以前の心構えを問われた気がしました。
ハワイの学校の様子、テレビ観戦後のインタビューからの歌もありました。今を生きる皆さんの立場(生活)からの歌でした。
秀作・佳作のそれぞれは横並びだとご理解ください。 |
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