 |
|
|
 |
|
|
|
(2025年2月) < *印 旧仮名遣い > |
|
大窪 和子(新アララギ編集委員)
|
|
|
|
秀作 |
|
|
○ |
|
つくし |
|
英語科の担任ゆえの合唱曲生徒が選びしスタンドバイミー
読めないとルビを振りたる歌詞ゆえに英語に聞こえずカタカナ響く
|
|
|
評)
教師である作者の生徒たちとの関わり合いが、温かくと伝わる。校内で行われる合唱祭であろうか。担任の先生に思いを寄せて英語の歌を選ぶ生徒たち。しかし片仮名でルビを振ったら「カタカナ響く」が絶妙。
|
|
|
|
○ |
|
はな |
|
ゆで卵の湯気かたかたと蓋鳴らす雪かき終えし朝の厨に
娘より甘きお菓子の雪見舞い車窓越しにて家まで入れず |
|
|
評) 今年の日本各地の積雪の多さを物語る2首だ。早朝から雪かきをして、やっと朝ごはんとなったキッチィンの様子。また折角お見舞いのお菓子を届けてくれた娘の車は雪にうもれた玄関までは入れない。さりげなく詠んでいるが異常な積雪の状態が伺える。 |
|
|
|
○ |
|
夢子 |
|
まだ生きていたと起き出す窓の外に私が植えたマネーツリーの大木
幸運を呼び寄せると言うマネーツリー九十歳の健康祝う |
|
|
評) 苗から植えたという一首もあるその木が大木となり九十歳の作者を守る。一首目の上の句と下の句の繋がり方いい。正に幸運を呼び寄せたマネーツリー、おめでとうございます。
|
|
|
|
○ |
|
鈴木 英一 |
|
毎年の浅草寺へと初詣つひ間違えぬ三叉路の道
境内はインバウンドたち溢れをりあたかも観光立国日本 |
|
|
評) 毎年行くところだから、間違える筈がない・・・だが間違えた。人間味のある歌。面白い。そして外国からの観光客、いろいろな要素がありそうだが、初詣でもそうなのだとびっくりさせられた。 |
|
|
|
○ |
|
原田 好美 |
|
冬の夕べ西空に三日月耀いて辺りの空気引き締めるごと
書き初めに「風」と書いたり強く優しく吹く風のごとわたしは生きたい |
|
|
評) 冬の夕べの三日月、凛とした空気が伝わる。二首目は少し苦労をしたけれどこれでよい歌になりましたね。力強い「風」という書き初めの字が目に浮かぶよう。 |
|
|
|
佳作
|
|
|
○ |
|
紅葉 |
|
病気ありストレスもありふたとせの楽ではなかりし学びなおしなりき
背が少し丸くなりたる気がするがキャリアを伸ばす下地はできた |
|
|
評) 勉強熱心な紅葉さん、二年間ですか、がんばりましたね。似たような歌を何首も目にした記憶があります。短歌作品として提案したいことは何を学んでいるのか少しでもいいから分かるような歌を作ることです。読後、もどかしい感じが残ります。 |
|
|
|
○ |
|
笹もち |
|
朝焼けを孕んだ屋根の雪が落ちふりかかりても咲いている薔薇
ただ食べる丸い背中の兎おり飼われる運命背負っているね |
|
|
評) 一首の中にいろんな情景を入れないほうがいい。まとまってはいますが前の歌、上の句と下の句に別の情景が描かれていて印象が淡くなっています。後の歌は面白いところを捉えていますが、どこにいる兎ですか?あなたが飼っているの? |
|
|
|
● |
寸言 |
|
|
漸く春めいた日がやってきました。皆さんがお住まいの地域はいかがでしょうか。
暖かくなるのはいいのですが、日本各地、九州や四国にまで雪が降ったというのに関東地方は雪どころか雨も降らず庭の土はカラカラです。
世界を見渡せば、あまりにも理不尽な争いばかり。最近読んだ九十九歳の作者前澤宮内さんの歌集「赤きコクリコ」から数首を挙げます。頑張りましょう!
反知性、嘘、デマ、扇動、暴力と、トランプ、ヒトラーに重なりて見ゆ
シオニストがガザでなし居るジェノサイド、アンネが知れば歎き悶えむ
すがすがしく自己主張せぬ卯の花の白き垣根に沿ふ道を行く
大窪 和子(新アララギ編集委員) |
|
|
|
 |
|