短歌雑記帳

宮地伸一の「アララギ作品評」


○三月二日午後の一時より茂吉先生の葬儀われの結婚式  直井 芳雄
○土屋君のまねなどしては駄目ですと低くきびしく言ひたまひけり  佐藤 正憲

【宮地伸一】齋藤先生追悼歌は選歌に殺到したことと思うが、選出された作品を見てもあまり秀れたものはなかった。その中では右の二首などおもしろい。因みにいう、

 キリストも弟子(○○)()悪き(○○)一人にて清き生態(いきざま)も歪められにき  添田 博彬

しみじみと老いて欲ふかくなりし妻()()より(○○)先に(○○)死ぬ(○○)かも(○○)しれぬ(○○○)  諸岡 芳夫

 これは「土屋君のまね」に当るであろう。

 先進の模倣乃至影響は拾えばいくらも見つかる。「先立ち歩む君も幻のごとき霧の街ここに住む我を忘れたまふな」(島磯子)は完全に「近藤芳美+中村憲吉」ではあるまいか。この辺をどう考えるべきか。

【榎本順行】追悼歌については前評に付言することはない。これは主観につきすぎてはいけないし、きびしい客観化を要請されるだけに、追悼の情深ければ深いほど良い歌が出来ると一概には言い切れないものがあるのではなかろうか。ただいつも感じることは、追悼歌は案外安易にまとめられすぎているという不満で、このことは今回も同様であった。

 先進の「模倣乃至影響」の点については、簡単に割り切れる問題でもないし、改めてまた具体例をもとに論じては如何であろうか。

昭和28年6月号

 (漢字は新字体に、仮名は新仮名遣いに書き換えました。)



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