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○ |
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宮地 伸一 |
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幾たびもモチロンと言ひ説明す幼稚園より帰り来し子は |
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竹乃里歌原本は此処に収まれどいづくに在りや仰臥漫録は |
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○ |
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佐々木 忠郎 |
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おもむろに崩れてひとひら散る牡丹みづからの葉にさやりつつ落つ |
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タンポポの絮に似て咲く唐松草凪ぐ日つづきに十日たのしむ |
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○ |
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吉村 睦人 |
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いくらかは幸せになりてゐるならむ父よりわれのわれより吾が子の |
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道の上にその面影を立たしめて今日われは行く余呉の海べを |
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○ |
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三宅 奈緒子 |
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青年の子規あそびきと海のぞむ頂きにその漢詩刻める |
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石槌山幾重の山をのぼり来ておそき桜藤の花房 |
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○ |
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小谷 稔 |
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白き藤むらさきの藤先ざきに垂れ咲く道もかなしみを呼ぶ |
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白楊のごとく素直にすがすがと詠む若者の現れ来ぬか |
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○ |
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雁部 貞夫 |
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爆破一瞬画面を覆ふ風と沙歴史なみする愚行を見つむる |
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何億も金を費やす大使館命かけてタリバンと渡り合ふ一人もなし |
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○ |
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石井 登喜夫 |
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けふことに孤独の思ひ雪の中にこぞりかがやく菜の花のいろ |
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春の雪に濡れて光れる石ひらき雪を花とも斂めまつりぬ |
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