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○ |
東京 |
宮地 伸一 |
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小惑星と地球の衝突もなくなると小さき記事読み今朝は安らぐ |
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月立つと遠き代の人言ひしことも肯なひ仰ぐとがり立つ月 |
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○ |
東京 |
佐々木 忠郎 |
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大森浜の白き汀線見下ろして互みに若き日を語るなし |
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わが手ひく妻の背ややに丸くなりしか沁みてぞ思ふ過ぎし歳月 |
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○ |
三鷹 |
三宅 奈緒子 |
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遠き日に夫に付添ひし救急車うつつにいまわが運ばれてゆく |
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もくろみのあまた潰えてただに臥す晩夏の安曇野ゆかむ願ひも |
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○ |
東京 |
吉村 睦人 |
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強酸性の水引き込みて木の尻鱒を絶滅せしめしは伝説ならず |
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ひとときは魚の絶えたるこの湖にウグイの稚魚の群なし泳ぐ |
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○ |
奈良 |
小谷 稔 |
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墓の盗掘いにしへより代々世襲してその子孫いまも集落をなす |
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アスワンのダムに立ちのきし部族とぞわが舟を漕ぎ舟歌唱ふ |
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○ |
東京 |
石井 登喜夫 |
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つるむらさきの細かき花に手触れつつ庭に立つまで妻の癒えきぬ |
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かにかくに蛍袋も立ち直り二日つづきし雨をよろこぶ |
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○ |
東京 |
雁部 貞夫 |
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降る如き星の夜なりきこのをとめを妻とせむと思ひき飯豊の山に |
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思ひ切つて購ひし机は英国のオーク材今こそ書かめ「深田久弥の山の生涯」 |
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○ |
福岡 |
添田 博彬 |
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三十四年わが働きしクリニックは閉ぢて十月(とつき)経ち未だ空きをり |
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坂の上に乱るる雲は燃ゆる如し角を回れば黄に輝けり |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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父も母も居らねば見せむ誰もなし夫の研究業績目録 |
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夫の仕事の邪魔をせず二人共に病まず四十六年はたちまち過ぎき |
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○ |
東京 |
實藤 恒子 |
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青春を互(かたみ)に励みし友を思ふ北広島に停車をすれば |
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クロールに平泳ぎにわが魚となるホテルのプールを独り占めして |
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(以下 H.P担当の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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テロリストをかくまふ国に核攻撃の先制もといふ危ふき世論 |
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否応なく防御の名目もってして軍備強化となりゆく気配 |
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○ |
小山 |
星野 清 |
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ローン組みて働きて卒へし大学を語るさへ明るしこの処女子は |
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オイシイを繰りかへし蕪の漬物をカナダの処女が音立てて食ふ |
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