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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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耳に手を当てて歌評を聞きいましし姿なつかし土屋先生 |
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四十過ぎし汝が職場を変へむかとふと洩らししにひと日こだはる |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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買ひし水飲みつつ妻の歩めるかウォーキングの旅行十日を恙くあれ |
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物見遊山ならぬウォーキングの旅終へて帰り来し妻いろつやの良し |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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一年ははやく過ぎつつ癒ゆるなし夏ぞらのもとなほし杖ひく |
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かくつとめつとめてつひに何があらむこころ弱りて二日(ふつか)三日(みか)をり |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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現実はさもあらばあれわが心の中の思ひも今の現実 |
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柄に軽き弾力あれば使ひ易し君の呉れたる銀の耳掻き |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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子規の墓にかたへの篠に雨ふりて過ぎし年月はすでに百年 |
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糸瓜は句に夕顔は歌に晩年の子規は詠み分けき語感鋭く |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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一口に言へばポンコツといふことか検査の結果は病にあらず |
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足の甲の浮腫をとると脚上げて寝てゐし父のその子ぞわれは |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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大き岩に身をのべ祈るガイド・ラル見つつしばらく己れつつまし |
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明日よりは氷河へ入らむ吾ら三人(みたり)夕餉の卓にコニャック一献 |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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使ふ当てなくて行なふ気安さに庭に蔓延る_?草(どくだみ)を干す |
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空母なく情報なく偏西風頼みしを敗れて嗤ふに吾は与せず |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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玉葱の皮は乾きて快し倉のむしろに薄くはじけぬ |
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子取ろ子取ろ山上の松に腰かけて呼ばふ天狗もさびしからむか |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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空寂の法徳を慕ひて来し西行その西行を慕ひて似雲 |
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咲き盛る桜の山を廻りつつ登りつむれば二人の庵の跡 |
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(以下 H.P担当の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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病子規の首あげて鶏頭を見しところ畳はにほふ雨続く日に |
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文明先生の通ひたまひし銭湯か昼湯の匂ひ路地にかぎゆく |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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少年の日の物語さながらに小惑星めざし探査機発てり |
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軟着陸一秒の間に惑星より試料採らむといふこの「はやぶさ」は |
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