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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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張学良も宋美齢も死す少年の日より心にとめゐし二人 |
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親父(おやぢ)の遺伝百パーセントと言ひしかどこの乱雑には我も及ばず |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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発行所が移りて一年目の朝(あした)紺屋町の方に向きて拝(をろが)む(一月八日) |
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きつちりと心をこめて丸を記す良き歌に逢ひしことのうれしく |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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灯ともせる大き客船ゆるやかに夜の湖(うみ)わたれり昨日も今日も |
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右腕を失ひてなほたぎつこころ絵筆左手に人は描きし |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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姫島に今し船の出でゆきて桟橋より人らの戻り来るところ |
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古塔あり陰陽神祀る祠あり伊美別宮社の杜をめぐれば |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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子規の歳の二倍を生きて松山に子規を語れば心の奮ふ |
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宇和の海霧の閉ざせば大いなる赤榕の葉群に降る雨を聴く |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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目ざむればドラクロアの絵の雲の色近づきてくる山並の上に |
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商工会対商工連の事を聞けりこの町にも複雑なるものがあるらし |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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東京の個展はこれが始めてと握りし大き手農の手なりき |
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沙留川に傷つける鮭見し秋九月それより秋味食ふこともなし |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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若き惑ひ語れるなかに黙しをりきはにかむ如き笑まひ浮かべて(住田和二氏追悼) |
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妻君を憎む歌一首今少し待てよと告げて採るをやめたり |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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心遠き一人を思ふ貰ひたるホトトギスは月夜を乱れ咲きつつ |
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若き女性のフロントの声日本人と知りて安堵の抑揚となる |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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氷上の舞は終末に近づくか地震プレートの上の日本の |
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「五年秋七月十四日河内国地震(なゐふる)ふ」日本最初の書紀の記録は |
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(以下 H.P担当の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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生くるもの殺めてつなぐわがいのちけふは鯊釣る風吹く土手に |
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何の会話がきつかけなりやお互ひの身辺整理に話及びぬ |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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伝へらるる新ウィルスに備へむと繋ぎてたちまちパソコン侵されぬ |
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天は自ら助くる者を助くると己れに言ひて今日も励ます |
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