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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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親の虐待受けずここまで育てるか登校をする小学生の列 |
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ああ今朝も読むにし堪へず若き父が痣と焼けどに子をば死なしむ |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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あやからむと買ひたるものを長寿蘭われを残して枯れ果てにけり |
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よしよしお前の分も生きるぞと枯れし長寿蘭を庭に埋めたり |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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山谷にはばたく大きくろき鳥羽音まざまざと朝の夢覚む |
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この朝々眩しきまで日にかがやけり居間に見る遠き街の一画 |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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三十歳最年少なりし土屋校長七十四歳最年長ならむ吉村校長 |
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立合川に旧浜川橋残りをり土屋先生住みしはこのあたりならむ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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累々と重ね影立つ荒き岩はじめて地殻成りし日を見す |
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鉄色の岩群うづむる谷を越え枯生やさしき牧に出でたり |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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何かメールは入つてをらぬかと妻の問ふ入つてをればすぐに告げむに |
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いろいろの事ありぬとも雪月花われをめぐらむ命つなげば |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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終戦の日の幼き記憶ただ一つうから集ひし縁のラジオに |
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国民学校最後の新入生たりしわれ兄の教科書に墨ぬり読みき |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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父逝きて産の破れし仕合せに家を出で夜警して星座知りたり |
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思ひ出で父母を悼むは稀となりあはあはと聞く後の母の死を |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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牧場を抜け丘を下りし家並の中落葉吹き溜り子の家ありぬ |
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木々芽ぶきチューリップはこぞり萌ゆる庭子ら住まぬ家に日はふり注ぐ |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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いつの時も穏しくありて生きいきと土屋先生を語りいましし |
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人を見抜く鋭さありて朗らなりしこの友と長く交はりて来ぬ |
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(以下 H.P担当の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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臣憶良も子の手を引きて歩みしかこの都府楼の堀のめぐりを |
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佐用姫が領布をば振りし山頂に今はハングライダーに飛べる処女ら |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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怯えつつ生くる己れと思はねどなぜにこの朝も安らがぬ夢 |
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情報のもるるは危険と報道陣遠ざくる国となれるか今に |
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