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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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あざやかに星の輝く宵ならず海沿ひの道ひとり歩むに |
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命ありこの場所に天の橋立をまたも見むとす股のなかより |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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機上より撮りし桜の五稜郭朝刊に見つつ恋ほしふるさと |
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足萎えて行き難くなれど故郷へ行くぞ行くぞと思ひつつ過ぐ |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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宇宙論より終末論へ若きらのほしいまま言へばたのしこのいま |
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指弾さるるなか面伏せて帰り来ぬまことに指弾さるべきは誰(た)ぞ |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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独裁者を非難しつつ自らも国歌国旗の強制をする |
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イラクの劣化ウランを調べむと行きし若者をわれは諾ふ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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南渕山のかの尾根に春蘭を掘りし日よ今日は麓に風を聞くのみ |
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政治への信わが捨ててすでに久し今憲法違反の首相を戴く |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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これだけの病を持ちて生きてゐる不思議さを医師と笑ひ合ひたり |
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耳の奥の意志あるごとき囁きに馴れてあり経る日々といはむか |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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ひと抱へ蝦夷の行者にんにく(キピトロ)送り来ぬ雪消え残る山に採りしと |
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庭おほひはびこるを摘みサラダとす意外にうましタンポポの葉は |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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金無くて退所かなはぬ弟を暑き埃踏み訪ね行きたり |
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弁当の菜は福神漬のみなるを疑はざりき皆貧しくて |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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オペラ座のはねて夜更けの街は雪迎へに来る子をドア近く待つ |
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さんざめく夜の酒場に対ひ合ふ今夜吾には吾が子のありて |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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トウツバキ明石潟より華やかに大きく咲けるに二人寄りゆく |
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花蘇芳オオリキュウバイの入り乱れ咲く花の間は蒼々と天 |
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(以下 H.P担当の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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分ちたる吾のニトロに胸痛を治めたまひき茅野の歌会に(悼和田俊和氏) |
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記憶なきまま臥すといふ新津さん応へなくとも一度会ひたし |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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苺買ひて札をくづせばよれよれのユーロをくれぬレジの女は |
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あこがれを抱きて対ふレンブラントも人に急かされ心に沁みず |
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