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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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逮捕するならしてみよ禁煙の条令は憲法違反とうそぶく人あり |
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押されつつ吊り革持てばほのかにも匂ひて体温も伝はるものを |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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ゆづる葉の下に老いたる馬酔木一木去年は休みて今年花咲く |
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老いぬれば馬酔木よ休み休み咲けあるじも気長に生きて眺めむ |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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十二年の辛苦に海をわたり来てつひに故国に帰るなかりし |
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水墨に描く楊柳のなびきたり和上の故里「楊州薫風」 |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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体重の減りたるわれかビル風に吹かれてよろよろと歩みてゐたり |
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どうといふこともなかりし七十五年なほ幾年か生きゆくならむ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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一瞥しコメントされぬ有難さ検査六十数項目の数値並ぶを |
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まれまれのよろこびにしてコレステロール値一八〇を妻に誇りぬ |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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尿管の存在をはじめて意識せり腹にカテーテルの残る感じに |
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朝の空に三日月の影あふぎつつ救急病棟に逆もどりせり |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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一度(ひとたび)は行かむと思ひしマカオの町鳩食ふ慣ひの今に続くか |
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人殺めて南海はるかに遁れたるアンジローは帰朝す聖ザビエー連れて |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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堪へ難くなりたる坂に腰を曲げ手を垂らす指が土に着くまで |
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アジアの平和乱す中国への武器輸出に今こそマスコミは口を噤むな |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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雪に軋むワイパーの音越えてゆくアルプの峠吹雪となりつ |
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昇りくる日の筋の中に音のして湖の地吹雪きらめきやまず |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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四天王脇侍に守られし慮舎那仏人間の愚かを怒りいまさむ |
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鑑真和上を象徴するか風浪になびき伸びゐる松の姿は |
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(以下 HP指導の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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精神科の受診を結局は諾ひて雪舞ふ街に顔伏せてゆく |
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雪もよひの空を映せる冬の水湛ふるプール見て立ちつくす |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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ともどもに年金頼りて暮す日をかつての児らとわが語るとは |
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西の東の教員よりの年賀状それぞれに学校の荒廃嘆く |
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