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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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月の下に昨夜位置せし木星が今宵ははるかに引き離したり |
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月と並び水にゆらげる木星を見つつ今宵も橋わたり行く |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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庭木々の春のよそほひ瑞みづし就中(なかにつき)老いしオンコの萌黄 |
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このオンコは家畳み上京する時に少年われが提げ来しものぞ |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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かはらぬは四十雀のこゑくろぐろと卒塔婆(そとば)破(や)れ立つまでの歳月 |
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こののちにこひねがふは何茫々と人過ぎことの過ぎて何時まで |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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新津澄子氏の病気治るまでと引き受けし千代田区の高齢者短歌会五年目に入る |
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法くぐり財蓄へし西武会長歴代の総理とは皆懇意にて |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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豌豆の蔓やはらかにわれの手を乞ふも心の明るさとなる |
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常になにかせねば心のおちつかぬ貧しき性は若き日のまま |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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魂抜きて墓とも言へぬ石ひとつけさの海北風(あらせ)に叫ぶかとみゆ |
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父方は祖父をすら知らず何せむに残れる石ら語ることなく |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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長き年月「アララギ」に何を学びしや擦れつ枯らしの歌の数々 |
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右顧左眄続けし彼の八年か洞ヶ峠の順慶に似て |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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膝に寄る犬を訝しむ暇なく体と家が浮く感じせり |
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揺られつつ火を消し怯ゆる犬宥め頭上を仰ぐ数十秒の間に |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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またしても地震(なゐ)の報道マグマ抱く星に棲みゐることを知れよと |
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今ごろはロシア上空か日本に十日ゐて会はずに帰りゆきたり |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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悲しみは不意につき上ぐ穏やかに笑まふ作務衣のうつしゑのまへ |
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何よりの供養とならむ告別式のみ子のバイオリングノーのアベマリアは |
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(以下 HP指導の編集委員) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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感情の起伏はげしき『病牀六尺』読みていくらか救はれてゐる |
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睡眠をおそれてしかも夜の長さ恐ると子規といへども書きき |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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天井に漫画もどきに並べるはまがふなきこの国の地獄極楽図 |
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ジャワ島よりバリの村に来て稼げるか用水の上に飯場かまへて |
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