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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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蝉の声をととひ初めて聞きしものをけふは路上に死骸ころがる |
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脚曲げて仰向けになり動かぬ蝉見おろして行く夕かげの道 |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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息子来て草むしりせしはうれしけれど日本たんぽぽああ跡形もなし |
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産卵の処(ところ)を探す黒揚羽みかんの葉むらにけふも来て舞ふ |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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たれこめて蔵王も見えぬ七月の曇りをゆきぬみ葬りのため (悼扇畑忠雄先生) |
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柔軟なるみ心たふとし「老いてなほ美しきもの」を見むと詠ひき |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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国家や国旗を強制してはならぬとふ天皇のみ心に服(まつろ)はぬ者ら |
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嘘つかぬ政治家などはゐる筈なし政治とは人を騙すことゆゑ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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禅寺の開け放たれて畳ひろき書院に徹る葉刈りのひびき |
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長生きの世となり厄除のこの寺も厄年に八十五歳を加ふ |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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雲の間に日はありながら流らふる霧は林床の隈笹濡らす |
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高原は蓮華つつじの花のときおのづから耀く若人に似て |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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串木野より海上八里なぎ渡り友の墓ある島へ近づく (甑島行) |
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里江石平良藺牟田に青瀬など島の港は良き名を持てり |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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桜の花降り来る下に眼閉づ過ぎて速きかな六十年は |
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蕊赤く花散る下に眼閉ぢ思へど母の仕種の一つも知らず |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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遠きビルの上に傾く七つ星耐へて今立つこの身を掬へ |
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足るといふ心に遠くからうじて日限の仕事終へて灯を消す |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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大平峠を下り来れば松川沿ひにふはふはと白きアオダモの花 |
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アオダモの近づきがたき気高さや山川の気にかかはりあらむ |
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(以下 HP指導の編集委員、インストラクター) |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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潰えたるツインタワーのありし跡土あらはにして生ふる草見ず |
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思ひ浮ぶ映像もうつつなるこの跡も見てゐるわれもみな泡沫(うたかた)か |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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山道に沿ふ白樺途絶えたりほどなく疎らな細き岳樺 |
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遥かなる埠頭のクレーンの高低を見つつ山頂に思ひは茫々 |
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