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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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酒は飲まねどしきりに煙草を吸ふ君をひそかに憂ひき告げざりしかど
小川町よりこの北千住の教室に連れだちて月々来まししものを |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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靴の紐しかと結びて八十四の妻は出でゆく三粁(キロ)ウォーキングに
三粁を去年より早く歩きしと最高齢記録証貰ひ妻帰りきぬ |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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春待つと夫のこころの刻まれし沙留(さる)川の石よ年ながくあれ
空知川の草荒れし河原をゆきゆきて相あふ石狩川が光り見え来つ |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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諦むることに馴れこしわが一生(ひとよ)ふたたび一つ諦めむとす
雨垂れの音にまじりてまたどこかで一つ鳴きゐるこほろぎの声 |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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走る電車の車体全面に大学の名を掲げたり品格捨てて
よき時代の教職なりき免許さへ再審査されむ屈辱もなく |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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烏いまだ目覚めず蝉もまだ鳴かず午前五時半わが試歩のとき
ベルトに穴を五つも加へ嘆きしが夏を凌ぎてひとつ戻りぬ |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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江戸のランボオと後の世称ふる如亭山人京の孤独死五十七歳
永観堂の裏山のぼり終に見出づ柏木如亭埋骨の碑を |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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衰へは眼窩の脂肪に及びたるや眼鏡のピントが合はずなりたり
胸水の吸引二日目にて三リットル超ゆれば記録する興味の失せぬ |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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遠き記憶つなぎ合はせて面影を思ひ出さむにとりとめもなし
大き屋根耀き現はるる日のためにみ寺の赤き蝋燭を持つ |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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草薮に埋もれておはす石仏(いしぼとけ)入りゆく道のこほしきものを
その友の恋のゆくヘを目守りたる湖(うみ)蒼あをと水無月のひかり |
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(以下 HP指導の編集委員、インストラクター) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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自由自由と叫べるうちに卒然と現れ出でしはただならぬ世ぞ
唯一の核被爆国としてかざし来し旗をもやすやす降ろすといふか |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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情調に流されやすき民族をくすぐりて「美しい日本」などと言ふ
「美しい日本」にせむとの所信ならば美しき日本語にて聞きたかりしを |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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わが影はビルの壁に折れ曲がり夕日のタワーは逆光の中
次々と傘を広ぐる空間に夜の雨匂ふ地下鉄の出口に |
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