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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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破れたるジーパンを共に穿(は)く男女優先席に手を握りつつ
五百円の銀貨見れば幼き汝を思ふ会へば一枚手渡すゆゑに |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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四年前ふるさとを去る機内にて永遠の別れかと吾は思ひき
山につづく港も町も下に見え現(うつつ)に吾は帰り来しなり |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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ひととせの早く過ぎぬとこの朝(あした)森の径(みち)ゆきて森の匂ひよ
「晩年こそ輝きてあれ」書きて来し友のエールを幾日かおもふ |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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現実といたく異なる空想にひたりてわれはひとときをゐき
父により殺されたりし少年のある時の目差しよみがへりくる(K高校生) |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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舟通ひ活気のありし衣渡(えのと)川文明先生も二十八九か
アララギと諏訪との縁の久しきを心に詣づ墓の四ところ |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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秋来ぬと木槿の花の過ぎがたにわが朝の試歩五百歩となる
秋彼岸にかへり来し子の姿かと草かげろふを手のひらに置く |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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売られゆく船はかつての北極星号(ステラ・ポラリス)か白亜のヨット五千噸なり
上海へ牽(ひ)かるる途上のステラ・ポラリス号空しく沈む紀州の海に
・ 九月二日潮岬沖にて沈没 |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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吸引の感触無きまま胸腔穿刺終りてわが見えぬ位置に試験管置けり
少なくとも八クールはなさむと医師言ふは吾に四月の命はあるらし |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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きりぎしに映るは午後の波の光(かげ)光(かげ)にたはむれ仔鹿は遊ぶ
赤潮に腐乱の後を如何にすと問ふに君は告ぐ海の自浄を |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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いまさばと逝きたる君を病む友を偲びて堪へ難し歌会の折をり
大らかにあれと言はれぬしたたかに酔ひていひたることのはかなく |
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(以下 HP指導の編集委員、インストラクター) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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人のあとにいつももの言ふ小さき声最も核心を突くと思ひぬ
夫ぎみを送りて三月物言ひの妖(あや)しくなりし君を伝へ来 |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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コロンビア大氷原に立たむ日のこの朝晴れて雪の山冴ゆ
氷河融けて氷の間よりほとばしる流れ汲まむと腕(かひな)を伸ばす |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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胃に残る酒を悔やみて雪の降る街灯の下に午前一時なり
日溜りに君と座りてワンカップ渡せばそれより長き沈黙 |
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