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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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わが路地に真冬も鋭く葉を伸ばす彼岸花の群は我を励ます
敬語無しの明治天皇伝読み終へて今更に知る世の移ろひを |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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足病みて年ごとに控へ目になる吾をもどかしとも言はず妻の明るし
初詣で今年も妻にゆだねたり罰はてきめん風邪をよくひく
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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惧(おそ)れゐし法案つひに成立す起きいでてこの朝の心はくらく ・改正教育基本法成立
滔々となべて押し流す一つながれその予兆ともこの法案成立
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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びつしりと住宅建ちしこの斜面ここに高射砲陣地ありたり
発射する砲弾なくてB29の編隊に砲身をただ向けしのみ
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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年若き守家持を偲ぶとき時雨は能登の海こめて降る
この村に子どもは少年一人とぞ守家持の知らぬ能登いま
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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音立てて落ちくる枯葉音なき葉散り際の差といふも身にしむ
信なくて読むといへども佳き言葉にしばしばわれを忘れて眠る
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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ペン部隊たちしは福岡雁の巣飛行場その時われはわが母の胎内にゐき
朽ち果つるはかの船のみかこのビルも集ふわれらも例外ならず
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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癌殺し胸膜を癒着さすスグレモノ悪寒戦慄を吾に教へき
脳と頚の転移を主治医は疑へど患者の吾には少し速すぎる
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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真珠筏のどかに海に並ぶ見てまたなき吾の今日が過ぎゆく
きらめききらめき海は続けり赤潮も自浄すといふ力を溜めて
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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再びの手術をこばみ家族らに見守られつつ友は逝きたり
わが万葉の講座聴きゐし静かなるその目差の思ほゆるかも
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(以下 HP指導の編集委員、インストラクター) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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明方の窓より見ゆる空の色探してゐたるもののひとつか
やがてゆく彼の道に見む空のいろ覚めゆく前の意識に見たり
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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宇井純の早暁の死を伝へ来し友の電話に覚めて座しゐつ
宇井少年の親友としてNHKテレビに君を語りし日ありき
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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吹雪く原一瞬晴れて沈みゆく夕日の色に忽ち染まる
みづからの孤独を守り止まり木にそれぞれの酒をそれぞれが飲む
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○ |
取 手 |
小口 勝次(HPアドバイザー) |
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梓川に流れ入りゆく清流をたどりて近づく明神池に
下諏訪の友の名付けし「万治の石仏」新田次郎が書きて広がりぬ
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