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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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もの足らぬ一日なりけり酒飲む日飲まぬ日決めてけふは飲まぬ日
気象庁は日本語を知らず「宵のうち」を「夜の初め頃」に改むと言ふ |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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散る時がこしと枝葉を離れゆく桜は白し庭いちめんに
仕事ひとつしづかに吾より離れゆく体(からだ)いたはれと諭すごとくに |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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下の世代に言葉通ぜずとこもごもに嘆けりけふは若き人らが
なべての処理インターネットにてすます世とこの若き人らさへに嘆くか |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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ところどころ小梨の花の咲き盛る疎林の中ゆく高原列車
二週間見ざる赤子を思ひつつ山の学寮への往還つづく |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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アララギも若かりしかな憲吉は燕岳よりこの寺に来し
芽吹く前の雑木の峡の西ひらけ見おろし遠く諏訪湖の湛ふ |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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妻ややに癒えゆくものか食卓に箸の動きが早くなりきぬ
食器棚の皿の重ね方にもルールあり教へて貰へば合理的なり |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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久々に天神詣でを果したり「う」の字大きな暖簾をくぐる
「郷に入らば郷に従へ」よく焼きし上方風のうなぎ又よし |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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死せる友を告げたる後に自らも前立腺病むを言ふこの友は
胸腔に留(とど)まるカニューレの先端処理尋ねむ思ひも痛むときのみ |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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残照はなほ匂へるに登り来し御陵をこめて雪となりたり
麓まで続く御陵の石の段ひた追ひくるは雪片のみか |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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はうきぼしは幾年振りか夕茜に太き尾を引くマックノート彗星
星かげの冴ゆる水面をわが泳ぎしかの感覚のよぎるたまゆら |
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(以下 HP指導の編集委員、インストラクター) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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鍬の柄に顎置きて眺むる梅の花仙ヶ岳に日のかくれゆくまで
十ばかり馬鈴薯伏せてゆくにすら冬眠のかはづひとつ傷付く |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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ブロンドの髪の少女が遅れ来て一礼し和太鼓の一員となる
日本人君のかけ声にこの国の人ら繰り返し和太鼓を打つ |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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マンションの足場組みゆく若者に日の移り来て髪の光れり
黙々と水を使へりこの夜の妻は越え得ぬ哀しみあるか |
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○ |
取 手 |
小口 勝次(HPアドバイザー) |
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わづかの間言葉を交しし媼去りて寄せくる波の音のみ聞ゆ
海の香の漂ふ店に今朝獲りしうつぼの開き長々と吊る |
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