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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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先に立ちし息子の皿に残せるにも箸をつけつつひとり酒飲む
酒保(しゆほ)に行き甘味品(かんみひん)やつと手にせるを喜びあひし友すでに亡し |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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葉陰葉陰に白き小さき花かをる蜜柑の下に草を引く妻
文明先生のみ歌に小川千甕(ちかめ)が絵を添へし茶掛一幅わが宝もの |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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皇子を哀しむ業平の古歌おもふにも今し杉山にキビタキのこゑ
栃材に轆轤(ろくろ)回してひそやかに人をり木の香みつる工房 |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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父親に似てゐるといふこの幼な祖父に似るといふ声も混じれり
君からの手紙のごとく待ちて読む月々の雑誌の「シベリア通信」 |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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わが野菜の自給率は約八割か食ひ残す菜の花は蝶呼ぶ
学生とともに聴講し平城(なら)の代の勤務評定の木簡を読む |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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結核に死を覚悟せし日もあれど母はあきらめざりき勁かりき
何を思ひ見てゐし吾か空焚きの薬缶が焦げて穴のあくまで |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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跡位浪(とゐなみ)を見せむと友ら先立ちて蘇鉄自生の海ぎし下る
文明先生岬の馬には目も呉れず波をよみ赤項榕よみ人間を詠む |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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三百歩歩きて息のけはしき吾立ち止まらむには杖がいるなり
月の食事三千円が目安にて夜警選びし吾若かりき |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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ハングル刻む種々(くさぐさ)今も着く聞けば漂着したる人もありけむ
帰化人の邑もありしと聞きて立つ越前の冬の輝く海辺 |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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気をつけよとわが手を取りて女坂を下りゆく君の足取り確か
有田焼の絵皿に透けるふぐの刺身熱燗の味も少し覚えて
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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天智さんと親しみ呼びてつつましく鰻をひさぐ湖族誇りて
桜の頃の神輿を担ぐことのみに帰省をするか若者らみな |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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惑星Xあらむと伝ふる今日の記事日本発の論といふもよし
追はれたる冥王星にとつて代はる惑星を数へたし命ある間に |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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靄ごもる石狩湾を迂回して隧道出づれば港に船なし
満ちてくるものは遠退き堕ちゆかむ吾が六十五歳のブラックホール |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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大阪にひとり住む子に青箭魚(さごし)買ふ島根産と聞き迷はず妻と
妻に似て酒弱き子が吾のために買ひ置きくれし灘の一本 |
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