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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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土屋文明は怖いと言ひて同じバスには乗らざりしかな五味智英(ともひで)氏
町かどにつぎつぎ万葉の一首記すこの小川町したしくもあるか |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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北限は三浦半島神島のはまばうが十年霜に耐へ黄の花ひらく
淡黄色の五弁花つぎつぎ咲きて散り短きいのち見す二週間ほど |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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出づるなく林の家に三日ゐて緑にわが身染(そ)むがにおもふ
ほそほそと令法(りやうぶ)の白き幹立ちてさやぐ若葉を窓より仰ぐ |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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優秀な中学生を騙しきてこの島に毒ガスを造らしめたり 大久野島
今もなほ後遺症に苦しみゐる幾人かその中にしてわが知る一人 |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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上つ瀬に下つ瀬に河鹿鳴き競ひ流れは滅びし跡を貫く
信長に焼かれ三日を燃えしとぞ峡を埋めけむ板屋根の町 |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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オン・デッキの材傾きしソ連船沈むがよしと思ひ見てゐつ
業界に名の轟きしわが武勇伝ソ連木材船を二十日間沖にとどめし |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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浜町の界隈夜の賑はひに友あり妻ありしたたかに酔ふ
今庄へ向ふ列車に川渡る水ゆたかなる足羽の川を |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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肋骨の歪むは転移とわが知りて夜半の痛みに心顫へき
今日の歩数増えし喜び刻置かず歩幅小さくなりしに気付く |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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十年前のままなる冬木静かにてここに一つの別れ至りぬ
美しく生きていませとひとりごつ吾は吾が日々に帰りゆくべく |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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背面の窪みて肉付きの豊かなる菩薩の姿ただに仰げり
思ひがけず日光月光両菩薩に写実の髄を見極めにけり |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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思ふまま言はず自ら傷付きて帰るは五十年前と変らず
この十年にかけがへのなき友あまた奪へる病癌に心臓に鬱 |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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マスコミの威力まざまざと見せつけて国宝薬師寺展の殷賑
ライトあびて日光菩薩像立てり四囲を埋むる人々の中に |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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さびしさの兆す夜を耐へのろのろと一人の床をのべむとしたり
頬を吹く風の冷たき朝を出づ回復せざる孤独感のなか |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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高橋の虫麻呂も山部の赤人も詠みし手児奈の奥つ城寂し
四百年超ゆるか否かと語り合ひ寺の欅をめぐりめぐりぬ |
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