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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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いくらかは子らの運命も変りけむ薬害に妻の死ぬこと無くば
子ら四人の並びて寝るを見おろして「しあはせ」と言ひきかの夜の妻は |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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安定せぬ血圧は父よりの遺伝とぞ思い做(な)しか老いて顔も似てきぬ
浮腫む足揉みつつ願ふ移転前に紺屋町の発行所是非是非見たし |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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六月の樹々に六月の花咲けど時は無残に過ぎてかへらず
「国体の護持」と忘れゐし語彙に遇ふこの語がかつて持ちゐし圧力 |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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北極の氷が崩れ落つる様眠らむときにまた目に浮かぶ
人間の国家のエゴが人類の地球エコを破壊してゆく |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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時置きて揚る噴水ある時は風に吹かれて一方(ひとかた)に落つ
暑き日の届かぬ森の流れには鴉浸かりて長く動かず |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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耐震診断が思いがけずわが施設入りにつながりゆくに言葉失ふ
この家に終の日までといふ願ひ身勝手なのか侘びしともわびし |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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校正の合ひ間に出で来て一服す移転迫りし町の角にて
モノクロのフランス映画を今宵見るギャバンもドロンも煙草くはへて |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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吾と歩くは既に見限りゐる犬か靴履きて立つに今日尾を振らず
腫瘍マーカー続けて動くに甲斐のなき心配りす吾は医なれど |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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蓮池の花を葉を一斉に乱しつつ渡り来る風に今日は真向かふ
重なりて落ちし蓮(はちす)の花びらを乗せてその葉のゆらぐことなし |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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めぐりゆく靴音ひびく無言館と己きづけり寂し過ぎぬか
戦ひの残酷を鋭く告発す家族五人の団欒の絵は |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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入院を明日に延ばして評をする君の声最後列の吾までひびく
交差点井手は幼き先生が預けられけんぽ梨拾ひしところ |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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東京湾またぐ道路が成りてよりはや十年か老いはたちまち
浅きパンツに腰の入れ墨を覗かせて前行くはああ日本のをとめ |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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シベリアを越えて飛びゆく飛行機に時(とき)戻りつつウイーンを目指す
ロシア上空忽ち過ぎて紛争のアゼルバイジャン飛び越してゆく |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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鰻重に熱燗わづか注ぎかけ蓋を載せしばし黙して待てり
「酒に酔ひて安しといはむ」と赤彦の詠むほど吾はこのころ酔はず |
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