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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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ああこれも日本の姿かマンガ本読む若者ら優先席に
支払ひて店出づるときふと思ふ有毒米を食ひしにあらずや |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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度忘れして辞書引くことの多くなり重たき卓上版広辞苑扱へずなりぬ
金輪際(こんりんざい)電子辞書など用ゐぬと我を張りしものを老には勝てず |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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熱き心寄せて励みし幾人(たり)を思へどときのただに過ぎたる
支笏湖歌会の直後に胸痛を訴へきそれより夫は起てず終りき |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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君病みています病院はいづこならむ列車は今し茂原を過ぎぬ 古山蔚氏
転びしと全身泥まみれで編集会に遅れ来たりしことのありたり |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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明日香路の棚田の道に車あふれ彼岸の今日晴れ彼岸花祭
飛鳥川をはさみて棚田相対ひ畦埋めて曼珠沙華の花相対ふ |
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○
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東 京 |
石井 登喜夫 |
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クンタ・キンテの「ルーツ」を思ひ浮べつつ人種差別よりわが目放たず
乗車口・座席に区別あるバスのなか準白人の日本人われは白人の中 |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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歌作る力存分に養ひて観潮楼歌会開きし鴎外漁史か
西欧渡りの先端知識と渡り合ひし左千夫の蛮勇われはたふとぶ |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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退屈し新聞読むに気付きたり幾らか気力戻りし吾か
CTに変化見えぬを良しとして月々の吾が受診は終る |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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隣ベッドにいたはる声のやさしきを残る左の聴力に聞く
病室のいづこの窓にか人をらむ月の砂漠を思ふか人も |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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月々を通ひし日比谷公会堂N響草創期の会員われは
力強きリズムに一途に感応せし己が青春の一夜忘れず |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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外交機密といへどもいまや隠し得ず「核持ち込ませず」の重き一項
核持たず自国自衛が果せるかあやふき問ひを自らに問ふ |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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冷静に思へば叶はぬも道理なりわが体力とこの本の嵩
いそがしき日々の暮らしは体力の衰へによるとあはれ気づきぬ |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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時空超えかの『遠遊』を思ひつつドナウの流れを今日下りゆく
教会の尖塔越えて朝茜差し来るウィーンは未だ眠れり |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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発行所の移転物件調べむと地図持ち傘持ち神田をめぐる
このビルの一室は良しと呟きてお玉ヶ池ありし町にも来たり |
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