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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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西空に今宵も強き光放つ金星見れば憂へも消えぬ
花よりもすがしと言はむ曼珠沙華鋭き葉を立て年も越えたり |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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部屋の壁トイレの壁にも古里のポスター貼りて孫に笑はる
年ごとに過疎化に寂るる故郷を足曳きて歩む夢を見にけり |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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橋二つ過ぎてやうやくに蛍ばしくらき水面(みなも)をひとり見おろす
かつて太宰が酔ひて歩みしみちならむいま痛む足曳きてわがゆく |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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幾度か切りて活けたる庭の菊なほ咲きつぎて年越さむとす
鉄道の枕木にてもさまざまに変化してきぬこの八十年に |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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電話番号変へて戻りし静けさよ隠遁に似て世より隔たる
わが公民館に花水木の苗を寄贈して工業高校来む春に閉づ |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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三階の編集室へ通ふもあとわづか手すりに触れず今日も上りぬ
夢の歌つくりし明恵を友言へど早も忘るる昨夜の夢は |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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菌ならず細胞が耐性持つ過程を抗癌剤服みてわれは知りたり
若き日にわが頼りたる放射線に吾も縋るべき命となりぬ |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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新年のレストラン飾る注連縄を七本送りくれよと言へり
石の家も裏の教会(キルヒエ)も変らぬに人のみは過ぐ過ぎて声なし |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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蛇行する道の先々の明るくて谷になだるるもみぢの山は
取りどりの色に輝く山また山霧晴れゆけば滴るもみぢ |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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憲兵の頃を父母にも語るなく一生を閉ぢて義兄は逝きたり
問ひてみたきことの幾つか浮びくる焼かるる義兄の出でくるときを |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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仙丈ケ岳をはるかに富士を望みつつ山の気を吸ふわれに命あり
積年の仕事ひとつをなし終へて川の音する峡に宿りぬ |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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日の差せる昼は寡黙に働きて人の恋しき夕べとなりぬ
音のなき一画過ぐれば次々と工場閉鎖を知らせる貼り紙 |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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土屋先生田端に住みし地を探し滝野川小学校前の坂下り行く
「春風やまりを投げたき草の原」子規球場の句碑は明るし |
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