|
|
○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
|
辛うじて去年(こぞ)は聞きにし?の声こほろぎの声今年は如何に
死にたくはないが生きゆくも大変と夜半に帰りてひとりつぶやく |
|
|
○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
|
純白と淡きくれなゐの木槿咲きやがて梅雨去る庭のうつろひ
木木のあひだ繁る葉自在に潜り舞ふ黄の蝶一つ羨しみて見る |
|
|
○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
|
この園のカリヨンのひびきよ久々に聞きて風吹く藤棚の下
心乱るるときに手にとる父の遺影あるかなき微笑をつねにたたふる |
|
|
○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
|
今日の昼は旧発行所の前通りイタメシ屋に行かむと誰か言ひたり
西の日のさし入り来しに気づかずに最終校正に皆向かひをり |
|
|
○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
|
宇品桟橋を踏みし軍靴の重き音偲ばむに茅萱(ちがや)そよぎてやまず
この港を発ちしわが父若き兵にまじりて歩調合はせ行きしか |
|
|
○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
|
この栃の大樹となるは見るなからむ花を掲ぐるその日待つべし
山法師ひと本咲けるに今年会ふ梅雨の雨ふる吾がうら山に |
|
|
○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
|
・今月、病気療養中の添田博彬選者の作品は欠如しております。
|
|
|
○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
|
見開き面の割付けに吾を忘れゐて今日は夕空に雲を見しのみ
鉛筆と朱筆交差するレイアウト午前二時一人の灯にかざし見る |
|
|
○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
|
華麗なる銀河の何に浮かび来る書き泥みゐてただ過ぎゆくに
狂ひなく月探査機を月面に落下せしめし映像爆弾テロ激化の記事 |
|
|
|
|
|
|
(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
|
○ |
四日市 |
大井 力 |
|
心さわぎ何か覚えて会ひに来し姉すこやかに畑草をひく
はらからの残る二人となりたるを姉と言ひあふ潮匂ふ畑に |
|
|
○ |
小 山 |
星野 清 |
|
焼け残る防空壕にて保たれし「武運長久帳」ぞ手ふれぬ
わが祖の血を分くる者が記念館に勤むることも縁と言はむ |
|
|
○ |
札 幌 |
内田 弘 |
|
何ひとつ仕上げて居ないぞちよつと待て夢の中にて死にゆく我は
自づから歩幅狭まる夜の路地今宵の悔いは今日のみのもの |
|
|
○ |
取 手 |
小口 勝次 |
|
諏訪高女の千代子を退学させよとの動きを土屋先生ただに押さへき
先進国の中にて最悪わが国の財政赤字をいよいよ恐る |
|
|