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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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雲のなかに今あざやかに欠け初(そ)むる日食を見るもこれが最後か
南方軍だけでも抗戦しないのかと泣きにし日より六十四年か |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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亡骸(なきがら)となりし熊蝉を妻呼びて黐の下へと葬らしめぬ
黐の幹下より仰ぎて見つけたり枝に縋れる汝の空蝉 |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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一つ希(ねが)ひに今年もつどひ山の湖(うみ)の白きかがやきに三日むかへり
対岸にいま点りゆく灯を見つつ久保田不二子をおもふそのつましき生を |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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老いゆけば自づからにして止むと言ふ何に言ひたる言葉なりしか
かかる時さういつまでもあるならずその時々を大切にせむ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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諏訪の湖を囲む山々明けやらずいづれの谷も霧白く吐く
夜の明けの独りの歩みクローバーの閉ぢたる葉群開きゆくころ |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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札幌の街なかにして春楡の大樹しげれり屯田の世の(北方植物園)
絶滅せし種の見本としてここに立つ蝦夷狼の剥製一躯 |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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・今月、病気療養中の添田博彬選者の作品は欠如しております。
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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呼べどはや応答もなしと伝へ聞き致し方なく見舞ふをやめぬ
杖持ちて迎へ給ひしは幾度か風迅き海に向ひて思ふ |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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諏訪の歌会はあすに迫りてひとり来し美術館東山魁夷の絵のまへ
朝宵に向かへる諏訪の湖に祈る思ひの全国歌会ぞ |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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土田耕平生まれしところ建て替り住み替りして人は街道に沿ふ
丸き石に刻まれて夫人と立ちますに触れているとき鳶の鳴くこゑ |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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人なかにくさめをすれば疑はれ視線がわれに向くかと思ふ
羊羹を切りて分けむかと言ふ時に近ごろ見ざる笑みを妻見す |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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地上の熱せり上がり来て四階のベランダに届く長き夕映え
みなもとは目のなき魚に還(かへ)るべしホモサピエンスの今の傲慢 |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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妻を詠みし歌の少なき赤彦の最晩年に三首を見つく
赤彦の「信濃路は」の歌をこの日頃読みては同郷の友を思ひぬ |
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