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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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わが晩年の幸(さち)と言はむか送られし梅酒と果実酒こもごもに飲む
今世紀のうちに出で来よ月面に立ちて短歌も詠み出だす人 |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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ふるさとを偲べと友よりがんがん寺(でら)と港の見ゆる絵葉書届く
足萎えて行くこと叶はぬ古里の新聞くれば貪りて読む |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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医師の身のいかに切なくゐ給ひけむとどむる難きおのが病変
去年の日もしかりき一夜(ひとよ)林に降る晩夏の雨を聞きて寝むとす |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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昨夜(よべ)の風にあまた落ちたる桜の葉木漏日明るき道をわが行く
青山にいただきし菊幾種類持ちてゆくべき庭なき新居
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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廃屋の軒下にいまも透きとほり蝮を浸す焼酎の壜
大き商社の看板掲ぐる養鶏場かかる過疎村の奥深くあり
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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眉根寄せするどく射抜く眼持つ憤怒の相と言へど浄らに
鞭のごと強靭にして宙支ふ阿修羅は細き腕(かひな)広げて |
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○ |
福 岡 |
添田 博彬 |
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・今月、病気療養中の添田博彬選者の作品は欠如しております。
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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ほのかなる光を保つ湖面には触れず雨雲の押し移り行く
噴きてゐし間欠泉も暮れゆきて湖はひととき膨らみて見ゆ |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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自づから覚悟されしか細胞に効く抗癌剤のなきを知りしより
手立てなき六月(むつき)余りその内なる葛藤を様ざまに思ひてやまず
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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雨霧に宮浦の森の合歓が浮く兄の盆会を終へて帰るに
花どきを終へし田原に霧沈み遠く宮居の森の黒ずむ |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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雲暗き空は眺めず事務をとる日食の中継を時に覗きて
北関東通るといふ皆既日食帯うれしめどああ二十六年の後 |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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うしろより我が背にいきなり抱き付きぬこの子はだあれ暖かき体
透き出でて蝉は抜け殻残しつつその腹しばし大きく息づく |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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正月に食ぶる黒豆成る里の丹波にわが乗る電車は入り来ぬ
仕事終へ力のぬけし思ひにて駅へのふれあひ橋を渡れり |
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