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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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いやしみて常に見しかど改めむ寒さに堪へて咲けるたんぽぽ
神田の通りに添ひて花咲く曼珠沙華ああ今のみと腰おろし見る |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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友の庭のあららぎの大樹は見事なりき今年も紅き実の果実酒届く
あららぎの実を軽度の焼酎に漬けしとふ透けたる瓶に紅く美し |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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いまわれの沁みて帰りたき場所はかの海見ゆる卓父母のゐて
フルタイムに勤めつつ厨ごとせし日々よ茫々と思ひ出づるときあり |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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一つ雲流れゆきてまた一つ似たやうな雲が近づきてくる
四手のごとき花穂持つゆゑシデと言ひ実の落つる様よりソロの木ともいふ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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豊かなる葉をひろげたる白菜よ台風に汝を守るすべなし
台風を迎へむと闇を睨みゐしかの緊張も過ぎてすがしむ |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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森田草平晩年過しし寺二か所伊那谷深く入り来て知る
漱石の娘を友と争ひし草平思ふつひの御寺に |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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遠き地に何を喜び生くるかと立ち止りたり橋の半ばに
時経たるものの静けさ潮入りの口塞がれて水淀みたり |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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うねうねと入りゆく道の遠くして四度となりぬ泰阜(やすおか)村は
山幾つなだれ込みたる谷の底ひ水の光りて橋渡りゆく |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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葦の風をカヌーに聞かむと子等誘ふ幼等が呼ぶ遠き電話に
吾が少年より教はる夏の大三角また白鳥座澄める夜空に |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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九十九里の白波を小窓に見下ろせば母乗せやらざりし悔い今になほ
露スケの奴と言ひて言葉を継がざりし従兄を思ふまたシベリアの空に |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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手配書の横顔が吾に似てゐると気付けば憂さはいよよ募りぬ
浴室のガラスの向かうに音立ててシャワーに洗ふ妻が霞めり |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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庄川に沿ひて平家の末裔住む荻町集落を静かにめぐる
雪に耐ふる合掌造りの梁厚く正三角形に組まれて太し |
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