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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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おそく帰りし部屋のあかりを点しつつ妻なくて今年は何十年になるか
接近して照らし合ひゐし月と星かくもへだたる一夜(ひとよ)のうちに |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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愛らしき花と思ひし甘野老(あまどころ)実りて忽ち鈴蘭を侵(をか)す
ふるさとより移して七十余年の鈴蘭ぞ蔓延(はびこ)る甘野老を妻に抜かしむ |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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去年(こぞ)の夏のかの昂揚は何なりし敗戦の弁聞きて寝むとす
若きよりのひとつ志をわれは汲むこの一人なほ見守りゆかむ |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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幼な子とバケツに植ゑし稲の苗分蘖終へて穂を出し初む
落花生の花終へし子房が土の中に入りゆく様を幼なの見しむ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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空襲にわが寄宿舎の焼けしかど貧学生にて惜しむ物なかりき
軍事教練の劣等生われ今に悔ゆ平和主義といふ自負なかりしこと |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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一軒のみ緑しるきは君が家蛙鳴きゐし沼すでになく
土手伝ひ自転車駆りて吾が家に来たまひし君その若き日に |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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「夕焼けの忌」には片耳の大鹿も来るかと鳩十の庭に佇む
天竜のあふれて村を浸したるその日の水嵩を記す杭あり |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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五味先生の詠まれし「夕山」は桑原城趾ならむと君を先立ててゆく
つかのまの虹の消えたる諏訪の湖(うみ)語ります先生の目交去らず |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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物と物交換の世に生まれたる富本銭鋳造再現の趾
銭が至上の思ひを生みし因(もと)のもとここに起れりこの国初の |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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オランジェリーの睡蓮の間に時長くありたる遠き旅の思ほゆ
職退きし後の幾年かかの自由夢のごとくにまた思ふかも |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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エレベーターのドア閉ぢてゆく瞬間に忘れゐるものあるやうな苛立ち
目の失せて深き海底に棲む魚(うを)光りつつ緩慢に動く悲しみ |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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三人の女人の赤き紙貼るを横目に見つつ寺を出でたり p-12
子規を慕ひ千葉より根岸短歌会に通ひし香取秀真は田端に住みき |
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