|
|
○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
|
この辛(つら)き経験これより生かすべし息子の来むをひたすらに待つ p2
わが体だいぶ痩せしかと問ふわれに回診の医師笑みて答へず |
|
|
○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
|
車椅子押し呉るる介護士の相見(あひみ)青年正(しゃう)十一時には門のベル鳴らす p2
車椅子より正月用の花をと指示すれば親身(しんみ)になりて良き花選ぶ |
|
|
○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
|
足曳きてひとり万助橋わたる久々に会はむ象の花子に p2
石床にかはらず立てる老いし象かの日よりさらに皮膚皺みたり |
|
|
○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
|
雪はまだ降りてゐるのか静かなり夜更けをなほも校正つづくる p2
取り返しつかぬ思ひに立ち止まるふれあひ橋のなかほどにして |
|
|
○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
|
わが友ら呆けずに長き命保ち会員のあまた減るをとどめむ p2
歌絶えし八十九翁に電話して口調確かな返事に恃む |
|
|
○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
|
雪五尺積もりし津軽の枯木平今宵の宿り嶽の湯近し p3
時おきて屋根より落つる雪の音ヒバの湯舟に濁り湯を浴む |
|
|
○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
|
レイアウト終へて灯の下に確認すこの充実を知る人のなし p3
没頭の時を惜しめり没頭の時に耐へ得ず辞めゆくものを |
|
|
○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
|
わが体調のやうやく戻り病みいます先生を心に荒川を渡る p4
せなまるめ病み臥しいます先生に会ひ得て寂し痩せたまひたり |
|
|
○ |
四日市 |
大井 力 |
|
川に添ふ畷(なはて)の道の月あかり西に蛇行の川が光れり p4
一株ひと株雪の田面に影を引く穭穂が立つ月の明りに |
|
|
○ |
小 山 |
星野 清 |
|
薄化粧してふくよかに納まれば掛けし言葉に返るかと思ふ p7
農を詠み病ひを詠みし数々の歌に実(じつ)ありき汝が父に似て |
|
|
(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
|
|
○ |
札 幌 |
内田 弘 |
|
生き残る小蝿の命を奪ふ時何と愉快な手を打つ響きよ p8
上下(うへした)に交差してゆくジンベイ鮫水槽の中は狩りなきバランス |
|
|
○ |
取 手 |
小口 勝次 |
|
秋田への赴任の前夜泊まりたる湖畔の宿に懐かしみ寄る p11
酸強き玉川温泉流れ入り田沢湖固有の国鱒(くにます)絶えき |
|
|