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○ |
東 京 |
宮地 伸一 |
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わが娘父われの病床に付添へりこの喜びは知らざりしもの
しみじみと由美子の顔を見つめたりさて下の句を何とつけむか |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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異常気象に介護サービス反故となり窓に凭れて荒るる空見る
北極の狐も熊も棲(す)めなくなる氷山融けて海に流れて |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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永田洋子死すといへば愕然と遠き世界がたちまち帰り来つ
若者らのかの狂気いまいづこにか長き長き世をへだつるごとし |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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かの辛き悲しき時が今にして思へばわれの青春なりき
願ひごと持つにやあらむ七福神めぐると言ふにわれも従ふ |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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氷る道を気遣ふ勤めも今はなく雪払ひ見る千両の朱
ひそかなるわが楽しみの一壜は忍冬(すひかづら)の花浸したる酒 |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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処女作を「晩年」と名付けしその時の太宰の心を思ひみるなり
ひと誘ひ宵の酒場へ入ることも稀となりたり吾が晩年か |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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遠き日に住みたる街の匂ひして家々の屋根に雪降り積もる
声ならぬ声を聞きわが立ち止る街路に雪のいよいよ激し |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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恒様の快気祝だふぐを食はむいざお出ましを電話の声は
この年も湯島の梅を見ふぐを食(たう)ぶ共に命ののぶる思ひに |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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孟宗の林の中の一本道真向うは朝焼けの雪の釈迦岳
雪明りする窓の下目覚めつつふと詠み終へむときを思へり |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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星三つ映る中継の小さき画面まれまれに人の声の聞こゆる
確認せるイトカワの微粒子千五百発表されて予算よみがへる |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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北を拓きし兵が連綿と植ゑつけし防雪林の百年は単純
彼が彼を揶揄してゐるぞささやかな充実が来たざまあみやがれ |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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八戸の港の朝市店多く地元の主婦らに混じりて購ふ
雪白き橅の林に沿ひてゆく奥より宿の湯の香ただよふ |
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