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○ |
東 京 |
故 宮地 伸一 |
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ああ吾も人と生まれて忝なあと何か月生きむにやあらむ
あと百年のちの短歌と世の中を思ひやる時心わき立つ |
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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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東日本大震災より一月余(ひとつきよ)身罷るまで作り溜めし歌幾百首有らむ
旨きごと酒に勝(まさ)るもの無しと言ひながら「長く飲まざり」は寂しき結句 |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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この春もさくらはつねのごと咲くか無惨に万余の人ら逝きたる
久々にひと日上水に沿ひ歩むかがやきて花のふぶき散る下 |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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自分は優柔不断だからとしみじみと語りたまひしことのありたり
年々に「春潮会」に続き「潮騒の会」かく引つ張り蛸の先生なりき |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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避難所の人らに受くるいたはりの身に沁むといふ独りの君は
戦災に津波に遭ひて八十四この友にいかなる再起待つべき |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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雷門より今戸への道ひた急ぐ御仏となりし先生に対面せむと
十三の時より学びて六十年つひの別れか御柩の君 |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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「ボランティア今は充分」と札下げし何人かの若き人と行きあふ
救助物資の山また警備員・ボランティア安否問ふ列の末は何処か |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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先生の逝かれしはまことか思ひがけぬへさの電話に耳を疑ふ
この寺のあけびの濃き花のしたゆきかへり己が心もとなし |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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先生の残したまひし花かとも屈めり土手のひとつ菫を
すみれ忌と密かにひとり呼びゆかむ四月十六日先生の日を |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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季節風強ければやすらへるわれなるか福島原発の崩壊進む
日本の破滅への過程を克明に世界に伝へよと宇井純言ひき |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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昨年(さくねん)の今日の二十時の恋しけれ君も君もまだ呑んでゐた
しんみりと茂吉を話し呑んでゐる俺も仲間にしてくれないか |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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被災地の惨状見聞きして夜は更くわが市に避難者受け入れも報ず
利根川の水運守らむと祀りたる金毘羅の鳥居割れて外さる |
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