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○ |
東 京 |
佐々木 忠郎 |
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歩行叶はぬ位で嘆くな忠郎さんと師の言ひ給ふ今朝のわが夢
この年の終らむとして呟きぬ父母より永き生ある幸を |
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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遠き日仰ぎいままた仰ぐ飛鳥大仏何に涙ぐましき心となりて
香久山に友ら登りゆき吾ら三人(みたり)ほてい葵花咲く田をゆきかへる |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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発行所に行きて仕事する喜びは六十年前と変ることなし
怠りて過ぎゆく日々に名護蘭は太き気根を伸ばしつづくる |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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学生の吾が岡山にて会ひし歌人保義佐太郎土屋文明
よき先輩に恵まれしかな度の強き眼鏡の小宮欽冶も居りて |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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塩害に放置されし穂何ならむ稲にもあらず麦にもあらず
塩釜を過ぎて線路の途絶せり代替バスは何処(いづこ)へ至る |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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時代の中に消えゆく一つ出版社あふるる思ひありて読み終ふ
帰り来て座る畳に木洩れ日のなべてがまろき光(かげ)をつくりぬ |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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カーブせる長き隧道の排気ガスに一瞬たぢろぐ放射能かと
隧道を出づればカーブ多き切り岸にて白きガードレール匂ふ青葉は |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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マイナスの海抜に人の住むべきか見直せと弥富のミュージカル一篇
生きて居ればこその誇りを戻すときあると干拓地の産みし楽劇 |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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宇井純の死を早暁に伝へくれし君も便り絶ゆ五年経ぬ間に
宇井の葬儀に同級生あまたありしかど便り知れるはわづかとなりぬ |
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(以下 HP指導の編集委員・インストラクター・アドバイザー) |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 |
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閉店のシャッター下りれば傍通る吾が一体をかき消してゆく
地下道より上がれば午後はどす黒き空がぐんぐん吾を飲み込む |
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○ |
取 手 |
小口 勝次 |
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地震にて帰宅難民騒ぎありき此度は台風にてまたも帰宅難民
都心にて帰宅難民となるやもしれず鞄の非常食に薬も加ふ |
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